2015年1月6日火曜日

053H型フリゲイト(ジャンフーI型/江滬I型)



053H型(Jianghu/江湖/江滬型)フリゲイトは1970年代中頃から建造が開始され、シリーズ最終艦は1996年に就役した中国海軍最大の建造数を誇るフリゲイトである。中国側の区分では、053H(Hは海haiの頭文字)、053H1型053HE型 、053H1Q型053H1G型の5つのタイプに分類されている。NATOコードネームでは、053H型と053H1型をあわせて「JianghuI型」、ヘリコプター施設を付加した053H1Q型を「JianghuII型」053H1G型を「JianghuⅤ型」と区分する。「JianghuIII/IV型」の名称は、中央船首楼を採用し艦形が大幅に変更された053H2型に与えられた。なおJianghuを漢字表記する際は「江滬」もしくは同音の「江湖」の表記が使用されることが多い。江滬型フリゲイトは各型合計32隻が建造され、事故で1隻が喪失し、2隻が海岸警衛隊に移籍して現在26隻が中国海軍で就役しているほか、エジプトに2隻(053HE型)、バングラデシュ(053H1型)に1隻が輸出された。

1970年代初めに中国海軍が保有していた対艦ミサイル搭載フリゲイトは、ソ連のリガ級フリゲイトを国産化した01型護衛艦(成都級フリゲイト)4隻のみであった(1971~75年にかけて魚雷発射管を撤去してSY-1艦対艦ミサイル(上游1/FL-1/CSS-N-1スクラブブルッシュ/P-15テルミット)連装発射機に換装する改装を実施)。中国海軍では、01型は船体が過小で火力にも乏しいと評価しており、新たに建造される053H型は、01型フリゲイトよりも大型化され、近海での護衛、対艦・対戦任務、海上警備、機雷敷設等の任務に当たり、一定程度の対空能力を有することが想定された。053H型の設計と建造を担当したのは上海にある上海滬東造船廠であった。設計に当たっては、1970年代初めに同造船廠が設計した053K型フリゲイト(ジャンドン型/江東型)がタイプシップとされた。053K型は中国海軍初の艦対空ミサイル搭載フリゲイトとして建造された艦であった。当初の計画では、対艦攻撃用の053H型と防空用の053K型を組み合わせて運用する予定であったが、搭載ミサイルであるHQ-61艦対空ミサイルの開発が難航したことから建造は2隻に留まり実際にHQ-61を搭載したのはネームシップの鷹潭(531号艦)のみであった。

053H型の設計では、兵装は全て既存の装備を流用することとされた。これは新規装備開発の時間を節約し、速やかに実戦配備を行うためであった。

053H型の艦形はタイプシップである053K型フリゲイト(ジャンドン型/江東型)と同じ平甲板形で艦首には053K型にはなかった小型のブルワークが設置されている。艦の中央部にSY-1発射機を2基搭載しているため、外見は同時期に建造された旅大型駆逐艦を小型化したような形状になっている。艦橋は露天式。近海での行動を前提に設計されたため、艦内施設は充実しておらず乗員の居住性には問題があったとされる。053H型のスペックは、全長103.2m、全幅10.8m、吃水3.19m、満載排水量1661.5トン。主機は12E390Vディーゼル2基2軸で、053K型よりも出力が落ちたため、最高速力は053K型の28ノットから26ノットに低下した。航続距離は7,200海里。

武装はB-34 56口径100mm単装砲(M1940)2基、61型37mm連装機関砲6基、SY-1艦対艦ミサイル連装発射機(7226型)基2、62式250mm5連装対潜ロケット発射機(RBU1200)2~4基、64式爆雷投射機(BMB-2)4基、爆雷落射機2基。

SY-1対艦ミサイルは、053H型の主兵装である。このミサイルは7226型連装発射機に2発が搭載され、艦の中央部に煙突を挟む形で装備された。SY-1は、ソ連のP-15 テルミットSSM(SS-N-2 スティックス)を元に開発された対艦ミサイルで、1960年に研究が開始され、1967年から生産が開始された。7226型発射機は、駆逐艦やフリゲイトの長魚雷発射機と換装するため1962年から開発が開始され1969年に実用化された装備であった。053H型は7226型発射機を2基装備しており、合計4発のミサイルを搭載している。船体が小型のため予備弾は搭載されていない。SY-1の主なスペックは以下の通り。全長6.2m、直径60cm、全幅2.3m、重量2090kg、弾頭380kg高性能HE弾、射程8~42km、最高速度マッハ0.6、巡航高度300m。ミサイルの誘導方式は中間段階が慣性航法式で、終末段階がアクティブ・レーダー誘導。電子妨害を受けない前提での命中率は70%以上。1発で排水量3,000t級の艦艇の戦闘力を喪失させることが可能。ただし初期の対艦ミサイルであるため、電子妨害に対する抵抗力は十分なものではなかった。

比較的強力な対艦兵装と比較すると、対空兵装は建造時点でも不十分なものであることは明らかであった。B-34 56口径100mm単装砲(M1940)は、ソ連から供与された2次大戦型の艦砲であり、操砲は全て人力で行われる。最大射程は20km。発射速度は毎分22発(これは理論値であり、実際には要員の訓練度や疲労度に大きく左右される)。操砲要員は6名。100mm砲の照準は艦橋上の対空/水上用測距儀を使いレーダーなどは使用しないため、悪天候や夜間には使用が大きく制限された。また、同じくソ連に由来する61型37mm連装機関砲も、射撃統制システムはなく各砲座が個々に対空目標を定めて照準・射撃を行う方式をとっており、いずれの装備も全天候性能を有しておらず、またジェット攻撃機や対艦ミサイルなど戦後登場した新たな経空脅威に対抗することは困難であった。しかし、053H型は既存の兵装を流用することが決定しており不十分な能力の装備であると分かっていても搭載せざるを得なかった。また当時の中国ですぐに実用化できる対空装備はこのぐらいしか無かったのも事実であった。

対潜装備は艦首部に62式250mm5連装対潜ロケット発射機(RBU1200)2~4基、艦尾部に64式爆雷投射機(BMB-2)4基、爆雷落射機2基を装備した。これは、当時の中国海軍の標準的な対潜兵装であった。

053H型のレーダー装備は、対空捜索用の354型(Eye Shield)、SY-1 SSM誘導用の352型(Square Tie)等を搭載しているが、これは計画当時でも、各国の同クラスの艦艇と比較すると比較的簡素な装備であった。また、CICや射撃統制システムは搭載されておらず、対空/水上用測距儀やレーダーで得られた各種諸元を各兵装の要員に伝えることしか出来なかった。

053H型は、1975年の建造開始からわずか5年間で14隻が建造された。これは、当時、海軍艦艇の旧式化から沿岸防衛の需要が逼迫していたこと、既存の装備を使用したため、無理なく建造することが可能だったことなどが背景にある。

これらの艦は、兵装や各部形状などの違いから3つのグループに分類されている。第一グループは#515「厦門」、#516「九江」、#517「南平」の3隻で、識別点は、艦橋正面が垂直、煙突は円形で僅かに後部に傾斜しており、後部37mm機関砲の直前に小型のマストが設置、RBU1200対潜ロケットを4基搭載等である。#516「九江」は他の艦に先駆けて1980年代中期に近代化改装を行っており053型の改良型である053HI型に順ずる艦となった。改装点を列挙すると、艦橋頂部に343型(Wasp Head)火器管制レーダーを設置したが、053H型でこのレーダーを搭載したのは「九江」のみである、これに合わせて、艦橋形状も変化している。100mm砲は79式56口径100mm連装砲(H/PJ-33もしくは712型)に換装され、RBU1200対潜ロケットは2基に減少された。後部マストは撤去され、遠距離捜索用の517A型(警-17H/Knife Rest)対空捜索レーダーが追加装備された。「九江」は艦齢30年に達した2004年に2度目の改装を行い、対艦ミサイル発射機を全て撤去、50連装122㎜ロケット発射機×5を搭載した火力支援艦に改装された。この改装で対艦ミサイル発射機、37mm機関砲×4、517型対空捜索レーダーが撤去された。79式100mm連装砲はシールドをステルス対応にした 99型56口径100mm連装砲(H/PJ-33B)に改めており、37mm機関砲は艦橋直前の2基のみとなった。ただし、122mm艦載ロケットは最大射程が40kmと比較的短く陸上からの反撃を受ける可能性が拭えないこともあり「九江」以外の艦への搭載は見送られることとなった。「九江」以外の#515「厦門」、#517「南平」は現在も竣工時の形状を留めている。両艦の識別点は煙突側面の黒窓の数であり、#515「厦門」は5、#517「南平」は4となっている。

第二グループに分類されるのは#511「南通」、#512「無錫」、#513「淮陽」(2006年「淮安」と改名)、#514「鎮江」、#518「吉安」の5隻である。識別点は艦橋正面上部が前方に突出している点、煙突が角型である、RBU1200対潜ロケットの搭載数は2基等である。

第三グループは、#509「承徳」、#510「紹興」、#519「長治」、#520「開封」、#551「茂名」、#552「宜賓」の6隻である。識別点は煙突の形状が多角形であること、後部マストの存在等である。#520「開封」は1985年8月18日に座礁事故を起こし退役している。このグループの#509「承徳」、#510「紹興」は、2006~07年にかけて、海軍から領海警備を任務とする海岸警衛隊に移籍、艦様を一新する大規模な改装を受けて「海警1002」、「海警1003」巡視船として再就役したことが判明した。

053H型は1975年から1980年までの5年間に14隻が建造され、中国海軍の沿岸警備艦艇不足を解消することに成功した。しかし053H型の対空、対潜能力は脆弱なものであり、CICが欠如している等兵装のシステム化にも遅れをとっていた。対空兵装は二次大戦型の対空砲のみであり、自動化も充分でなく全天候性能も有していなかった。また、NBC防護能力は付与されておらず、ダメージコントロールの点でも多くの不備があった。 これらの問題は、当時の中国の国際的孤立と艦船設計建造ノウハウの不備に起因する所が背景にあるとされる。

053H型は現在に至るまで、中国海軍で最も多くの同型艦を有する中大型水上戦闘艦である。国際的孤立の中で限られた技術水準で開発されたこと、海軍艦艇に関する各種ノウハウの蓄積が充分でなかったことから、その性能は完成当時から十分なものであるとは言えず、艦艇の運用面でも、艦形が小型で充分な航洋性能や長期航行に必要な施設を持たない、対空/対潜装備の脆弱性、旧式な電子装備、脆弱なダメージコントロール等、様々な問題点を有していた。ただし、中国海軍の歴史的変遷から見た場合、053H型が建造された時期は、中国海軍が人民戦争論に基づく沿岸防備艦隊から、領海の維持や海洋権益の確保を目的とした外洋艦隊へと転換する過渡期であり、053H型はこの時期に必要とされた沿岸防衛任務や巡視艦艇として数的要求に答えた艦であったのは間違いないといえる。

053H型は、1990年代に入るとチャフ/フレア発射機や電子戦装備を追加装備したり、情報化に対応するため衛星通信アンテナやデジタルデータリンクシステムを搭載する近代化が行われている。ただし、中国海軍は老朽化が激しく装備的にも陳腐化した053H型を、10年以内に新鋭の054型フリゲイトで置き換えたい考え。退役する053H型のうち4隻を北朝鮮に売却するという噂もある。

性能緒元
基準排水量1,425t
満載排水量1661.5t
全長103.2m
全幅10.8m
主機ディーゼル 2軸
 12E390Vディーゼル(7,000馬力)×2基
速力25.5~26kts
航続距離7,200海里
乗員190名(うち士官30名)

【兵装】
対艦ミサイルSY-1艦対艦ミサイル(上游1/FL-1/CSS-N-1スクラブブルッシュ/P-15テルミット)/ 連装発射筒(7226型)2基
対潜ロケット250mm対潜ロケット /62式250mm5連装対潜ロケット発射機(RBU12002~4基
B-34 56口径100mm単装砲(M1940)2基
近接防御61式37mm連装機関砲6基
爆雷64式爆雷投射機(BMB-24)4基
 爆雷落射機2基
機雷機雷用軌条2基(24発搭載可能)
※#516「九江」はSSMや対潜兵器を撤去し、代わりに50連装122㎜ロケット発射機×5を増載。
砲塔もステルスシールドの99式56口径100mm連装砲(H/PJ-33B)×2に換装。

【電子兵装】053H型「江滬I型」※典型的なもの。
対空対水上レーダー354型(Eye Shield)1基
火器管制レーダー352型(Square Tie)SSM用×1基
航海レーダーRM-1290(Racal Decca)1基
ECMシステムRWD-8 
ソナーEH-5 

同型艦
1番艦承徳Changde5091975年就役、2007年に海軍を退役、海岸警衛隊に移籍し「海警1002」-
2番艦紹興Shaoxing5101976年就役、2007年に海軍を退役、海岸警衛隊に移籍し「海警1003」-
3番艦南通Nantong5111976年就役、2012年8月5日退役[9]-
4番艦無錫Wuxi5121976年就役、2012年8月5日退役[9]-
5番艦淮陽→淮安Huaiyang→Huaian5131977年就役、2006年12月20日「淮安」と改名[8]東海艦隊所属
6番艦鎮江Zhenjiang5141977年就役。2013年5月12日退役[11]-
7番艦厦門Xiamen5151977年就役東海艦隊所属
8番艦九江Jiujiang5161978年就役、2004年に火力支援艦に改装東海艦隊所属
9番艦南平Nanping5171979年就役東海艦隊所属
10番艦吉安Jian5181981年就役東海艦隊所属
11番艦長治Changzhi5191982年就役北海艦隊所属
12番艦開封kaifeng5201980年就役、1985年座礁事故により退役-
13番艦茂名Maoming5511986年就役、2012年?に退役(解体中[10])-
14番艦宜賓Yibin5521986年就役、2012年?に退役(解体中[10])-





▼対地攻撃用に122mm50連装ロケット発射機5基を搭載した#516「九江」。


▼「九江」の50連装ロケット砲発射機。

▼海岸警衛隊に移籍された053H(江滬Ⅰ型)

▼巡視船として改装後の様子。



【参考資料】
[1]「碧海争鋒-中日両国駆護艦艇50年的発展対比與反思」『戦場文集』第2巻 2006年6月専刊 (新民月報社)
[2]「中国053系列護衛艦外形識別」『兵工科技』2006年1月号 (周録陽/兵工科技雑誌社)
[3]「江湖級護衛艦的発展及現代化改装前景分析」『艦載武器』2007年2月号 (銀河/中国船舶重工業集団公司)
[4]「碧海争鋒-中日両国駆護艦艇50年的発展対比與反思」『戦場文集』第2巻 2006年6月専刊 (新民月報社)世界の艦船No.647(海人社)
[5]Chinese Defence Today
[6]Global Security
[7]The Naval Data Base.近代世界艦船事典
[8]MDC軍武狂人夢「江湖級護衛艦」
[9]China Defense Blog「Bye bye FFG 511 and 512」(2012年8月5日)
[10]China Defense Blog「Two more Jianghu FFGs are done for」(2012年12月16日)
[11]新浪網-軍事「中国海军第1代导弹护卫舰镇江舰退役 服役35年」(2013年5月13日)

053H1型フリゲイト(ジャンフーI型/江滬I型)



053H型フリゲイト(ジャンフーI型/江滬I型)は1975年から1980年までの5年間に14隻が建造され、中国海軍の沿岸警備艦艇不足を解消することに成功した。しかし053H型の対空、対潜能力は脆弱なものであり、CICが欠如している等兵装のシステム化にも遅れをとっていた。対空兵装は二次大戦型の対空砲のみであり、自動化も充分ではなく全天候性能も有していなかった。また、艦にはNBC防護能力は付与されておらず、ダメージコントロールの点でも不備があった。 これらの問題は、当時の中国の国際的孤立と艦船設計建造ノウハウの不備に起因する所が大きかった。

053H型の建造と運用が開始された1970年代後期、中国海軍は西沙/南沙諸島などの領有権をめぐって南シナ海の緊張が高まったことを受けて、南海艦隊にフリゲイト部隊を配備する事を決定した。1977年7月には「053H護衛艦の建造に関わる改修要求」が提出され34項目の改修点が提示された。これを受けて、滬東造船廠は南海艦隊に職員を派遣し、南シナ海での艦艇運用に必要な項目の調査を行った。設計案は1979年に完成し、この改修型は053H1型と命名された。053H1型は053H型と比べると兵装や船体にかなりの変更が施されたが、NATOコードでは053H型と同じ「Jianghu1」型に分類されている。

053H1型の設計に当たっては、関係が改善された西側諸国から入手した技術が大いに生かされている。また装備の自動化に当たってフランスの支援を受けたとの情報もある。053H1型は当初12隻建造の予定であったが、実際に建造されたのは1980年から1985年にかけて竣工した#533「寧波」(のち「台州」(Taizhou)と改称。[8])、#534「金華」、#543「丹東」、#553「紹関」、#554「安順」、#555「昭通」、#545「臨汾」、#556「湘潭」、#557「吉首」の9隻であった。#544「四平」は当初053H1型として建造されたが、西側兵器の試験艦に転用(053H1Q型)され、11、12番艦は設計を抜本的に改めた053H2型フリゲイト(ジャンフーIII/IV型)として竣工することとなった。

053H1型は、053H型に設けられていた艦首部のブルワークを廃止している。船体側面にはビルジキールが設けられ荒天時の船体の安定化が図られている。機関部の構成は053H型と変更は無い。ただしレーダーなどの電子装備が充実したために、それらに対する電力需要を満たすために発電装置を2基追加装備して、発電能力を20%向上させている。煙突形状は円形で053H型の一部にあった煙突頂部のマストは撤去、艦橋直後のラティスマストの頂部が053H型に比べて僅かに後方に傾斜している。また、外部から確認することは出来ないが、亜熱帯地域である南シナ海で運用されるため、艦内の空調能力が強化されていると推測される。

053H型と大きく変わった点の1つが兵装である。053H型では、既存の装備を搭載する設計方針であったため、B-34 56口径100mm単装砲(M1940)61式37mm連装機関砲といった二次大戦時のソ連に由来する旧式兵装を搭載せざるを得なかった。これらの装備は、操作に多くの人員を必要とし、その一方で全天候性能は無く、ジェット機や対艦ミサイルなどの戦後登場した経空脅威には限定的な対処しか出来ない物であった。

053H1型は上記の兵装に換えて、1970年代に実用化した79式56口径100mm連装砲(H/PJ-33)と 76A型37mm連装機関砲(715型)を搭載した。この2つの装備は、053K型フリゲイト(ジャンドン型/江東型)で最初に搭載されて実用化に漕ぎ着けた物であったが、053H型建造の時点では搭載を見送られた装備であった。

79式56口径100mm連装砲(H/PJ-33)は、砲システムの自動化を進め、また中国の艦載砲としては初めてレーダー照準射撃を可能とした。100mm砲の管制は、艦橋頂部に設置されたYakor 2M (Sun Visor)簡易火器管制システム(のち343型(Wasp Head)射撃管制レーダー/ Sun Visor B火器管制システムに変更)と弾道コンピュータのデータに基づいてコントロールされ、半自動モードの場合は砲手が光学照準器を用いて遠隔操作する。砲口初速は920m/秒、最大射程は海上目標に対して22km、対空目標には15km。発射速度は1門当り毎分25発。給弾機構の自動化が進んだため、手動装填のB-34 56口径100mm単装砲のように発射速度が人員の練度や疲労度に左右されることも無くなった。中国海軍では、2基の79式56口径100mm連装砲の能力は6基のB-34 56口径100mm単装砲に匹敵すると判断されている。

76式37mm連装機関砲4基が搭載されたが、本砲を搭載したのも053K型が初である。76式は、61式37mm連装機関砲(70K)の代替として陸軍の74/79式37mm連装機関砲をベースに開発された艦載機関砲である。76式は、弾薬装填を自動化し操作要員を削減、341型レーダーと射撃統制装置による遠隔操作を可能とするなど一定の進歩を見せている。ただし、053H1型は竣工時には341型レーダーは未搭載で、後日追加装備の形で搭載された。なお、従来の砲側照準による手動操作方式も併用している。76式のスペックは以下の通り。砲口初速800~1000m/秒、最大射程9,500m、対空有効射程3,500m、発射速度320発/分(1門あたり)、俯仰範囲-10度~+85度。各砲架の直下には弾薬庫があり、1,650発の機関砲弾が搭載されている。搭載機関砲は053H型の6基から4基に減らされたが、砲の性能向上や全天候性能を得たことにより、同等以上の能力を発揮できるとされている。

053H1型の対空兵装は依然として100mm砲と37mm機関砲のみであったが、#555「昭通」は艦橋直前の対空機関砲を37mm機関砲の側面に2発のPL-9H赤外線誘導艦対空ミサイルを搭載した715II型ガン/ミサイルコンプレックスに変更した。ただし、この兵装は#555「昭通」以外での運用は確認されておらず、試験的運用に留まった。

対艦ミサイルも053H型のSY-1艦対艦ミサイル(上游1/FL-1/CSS-N-1スクラブブルッシュ/P-15テルミット)から、その改良型のSY-1A艦対艦ミサイル(上游1/甲)に変更された。SY-1は中国第一世代の対艦ミサイルで、巡航高度が比較的高く(300m)、迎撃が比較的に容易で、電子妨害に対する抵抗力も十分ではなかった。SY-1Aは、1980年代前半に開発が開始された。開発の主眼は防空圏突破能力と命中精度の向上に置かれた。誘導用のレーダーは新型のモノパルスアクティブレーダーに換装され、電子装備も旧式の真空管主体の構造から軽量な集積回路に置き換えられた。被発見率を低下させるため、より低高度を巡航する事が求められ、航路計算装置と機械/電子式自動制御装置と無線高度計算装置が装備され、ミサイルの全行程において正確な飛行高度のコントロールが可能となった。これにより飛行高度は巡航時150m、終末15~20mと、SY-1に比べてかなり改善された。SY-1Aは1983年に制式化され、053H1型への搭載が実施されることになる。

対潜装備は053H型の後期型と同じく、艦首部に65式250mm5連装対潜ロケット発射機(RBU-1200)2基、艦尾部に64式爆雷投射機(BMB-24)4基、爆雷落射機2基を装備。このうち65式対潜ロケットは、建造後の改装で87式250mm6連装対潜ロケット発射機2基に換装されることになる。

053HI型は、建造時期や就役後の改装によって装備にかなりの変化が見られる。初期の建造艦は、電子装備は053H型と余り差の無いものであったが、Yakor 2M (Sun Visor)簡易火器管制システムを343型(Wasp Head)火器管制レーダーに換装、後部構造物上に517型(Knife Rest)対空捜索レーダーと37mm機関砲管制用の341型火器管制レーダーを搭載するなど、次第に充実した物になっていった。本格的なECM装備は搭載していなかったが、中国のフリゲイトとしては始めて前部マスト両側面に2基のチャフ/フレア発射装置を搭載し、一定程度生存性を向上させた。これらの改装は、1989年にバングラデシュに売却された#556「湘潭」を除く8隻に順次施されていった。このほか、一部の艦には後付で、イギリス製CTC-1629簡易CICが設置された。1990年代に入るとECM機器を追加装備したり、情報化に対応するため衛星通信アンテナやデジタルデータリンクシステムを新たに搭載する近代化が継続的に行われている。

053H1型はタイプシップである053H型と比べて一定の性能向上を果たし、053H型の運用実績を反映して実用面でも改良が加えられた。ただし、その兵装や電子装備、火器管制システムは建造時点で旧式化しており、対空・対潜装備が十分ではなく、現代戦におけるそれらの脅威に十分対抗し得ないという状況は053H型と同様であった。特に対艦ミサイルによる攻撃に対しては有効な迎撃能力はほとんど無いと見なされていた。そのため、053H1型は海軍航空隊の行動範囲内での活動を前提とすることになる。

このような問題はあったものの、すぐに053H1型に替わる汎用フリゲイトを開発することは、当時の中国の限られた技術水準では困難であり、改革開放政策の経済開発優先の状況下で軍事支出が抑制されたこともあって、1980年代を通じて053H1型の建造を継続せざるを得ない状況が続くことになる。

【2008年4月29日追記】
バングラデシュは1989年に輸入した053HI型フリゲイト「オスマン」に、中国から輸入したC-802A艦対艦ミサイルを搭載する近代化改修を行うことを決定した。

【2008年5月16日追記】
Defense Newsの5月14日付けの報道によると、中国の支援を受けて近代化改装を行っていたバングラデシュのフリゲイト「オスマン」が、5月12日にベンガル湾でC-802A艦対艦ミサイルの試射に成功したとのこと[11]。

【2012年3月16日追記】
2011年、053H1型の5番艦「安順」と9番艦「吉首」が中国海軍から除籍後にミャンマー海軍に売却され、それぞれUMS「Mahar Bandoola」(F21) 、UMS「Mahar Thiha Thura」(F23)と命名された[14][15]。両艦はミャンマー海軍への引渡し後、2012年3月12日にはヴェトナムのダナン市ティエンサ港に寄港したが、これはミャンマー海軍艦艇がヴェトナムを訪問した初の事例となった[15]。

【2012年6月21日追記】
ミャンマー海軍に引き渡された053H1型「Mahar Thiha Thura」(F23)が近代化改装を実施していることが判明[16]。対艦ミサイルをC-802A4連装発射機2基に換装、電子妨害装置や一部のレーダーも近代化が施されたとの事。

性能緒元
基準排水量1,420t
満載排水量1,700t
全長103.2m
全幅10.8m
主機ディーゼル 2軸
 12PA68TC/12E390VAディーゼル(8,000馬力)×2基
速力26kts
航続距離2,700海里/18kts
乗員175名

【兵装】※改装後の状態。
対艦ミサイルSY-1A艦対艦ミサイル(上游1A/甲 / 連装発射筒(7226型)2基
対潜ロケット250mm対潜ロケット/65式250mm5連装対潜ロケット発射機(RBU-1200)2基(弾薬40発搭載)
79式56口径100mm連装砲(H/PJ-33、712型)2基
近接防御76式37mm連装機関砲(715型)4基
爆雷64式爆雷投射機(BMB-24)4基
 爆雷落射機2基
機雷機雷用軌条2基(24発搭載可能)
※対潜ロケットは就役後の改装で、87式250mm6連装対潜ロケット発射機2基に換装
※#555「昭通」は艦橋直前の対空機関砲×2を 715II型ガン/ミサイルコンプレックス2基に換装

【電子兵装】※改装後の状態。
対空対水上レーダー354型(Eye Shield)1基
長距離対空レーダー517型(Knife Rest)1基
火器管制レーダー352型(Square Tie)SSM用 1基
 343型(Wasp Head)SSM&砲用 1基
 1341型機関砲用 1基
航海レーダーRM-1226もしくはRM-1290(Racal Decca)1基
ECMシステム931-1もしくは米製Mk-36RBOC 
中深度捜索ソナーSJD-5 
偵察用ソナーSJC-1B 
通信用ソナーSJX-4 
衛星通信用アンテナ  
CICCTC-1629簡易CIC(一部の艦が竣工後の改装で装備)

同型艦
1番艦寧波→台州Ningpo→Taizhou5331981年7月12日起工、1981年12月13日進水、1982年6月30日就役、2003年3月6日「台州」と改名東海艦隊所属
2番艦金華Jinhua5341982年5月21日起工、1983年5月27日進水、1983年12月13日就役東海艦隊所属
3番艦丹東Dandong5431983年12月23日起工、1985年1月25日進水、1985年5月30日就役北海艦隊所属
4番艦韶関Shaoguan5531984年3月31日起工、1985年5月2日進水、1985年9月24日就役南海艦隊所属
5番艦安順Anshun5541984年12月29日起工、1986年3月10日進水、1986年6月27日就役、2011年除籍。ミャンマーに売却され「Mahar Bandoola」(F21)と命名-
6番艦昭通Zhaotong5551985年8月3日起工、1986年9月7日進水、1987年3月24日就役南海艦隊所属
7番艦臨汾Linfen5451985年8月30日起工、1986年11月9日進水、1987年9月30日就役北海艦隊所属
8番艦湘潭Xiangtan5561985年11月15日起工、1987年7月14日進水、1987年12月20日就役、1989年にバングラデシュに売却され「Osman」(F18)と命名された-
9番艦吉首Jishou5571985年11月15日起工、1987年11月8日進水、1988年6月15日就役、、2011年除籍、ミャンマーに売却され「Mahar Thiha Thura」(F23)と命名-

▼053H1型2番艦#534「金華」の就役直後の状態。この時点での電子装備はタイプシップである053H型と大差ないものに留まっている。

▼就役後に改装を受けた#533「金華」。艦橋頂部の射撃統制レーダーが343型(Wasp Head)に換装、後部構造物には354型(Eye Shield)対空レーダーと37mm機関砲管制用の341型レーダーが追加装備されているのが分かる。

▼7番艦#545「臨汾」。こちらも改装後の様子。

▼053H型#519「長治」(右)と053H1型#545「臨汾」(左)。艦首のブルワークの有無や兵装の相違など両艦の違いが見て取れる。

▼バングラデシュに輸出された053H1型(元#556「湘潭」)。同国海軍ではBNS「オスマン」(#F18)と命名された。写真では一部の電子装備に変化が見られるが、多くの装備は原型のまま。

▼近代化改装後のBNS「オスマン」(#F18)。対艦ミサイルをC-802A四連装発射機二基に変更しているのが分かる。

▼入渠中の#545「韶関」。053H型にはなかったバルバス・バウの様子が分かる。

▼#555「昭通」。76式37mm機関砲にPL-9J赤外線誘導艦対空ミサイルを搭載した715II型ガン/ミサイルコンプレックスを試験的に搭載。



【参考資料】
[1]「碧海争鋒-中日両国駆護艦艇50年的発展対比與反思」『戦場文集』第2巻 2006年6月専刊 (新民月報社)
[2]「中国053系列護衛艦外形識別」『兵工科技』2006年1月号 (周録陽/兵工科技雑誌社)
[3]「江湖級護衛艦的発展及現代化改装前景分析」『艦載武器』2007年2月号 (銀河/中国船舶重工業集団公司)
[4]「碧海争鋒-中日両国駆護艦艇50年的発展対比與反思」『戦場文集』第2巻 2006年6月専刊 (新民月報社)世界の艦船No.647(海人社)
[5]東方網
[6]大旗網-飛揚軍事
[7]中国武器大全
[8]超級大本営「533改名為台州艦」[1]
[9]China Air and Naval Power
[10]Chinese Defence Today
[11]Defense News「Bangladesh Navy Tests Chinese Anti-Ship Missile」(2008年5月14日) 
[12]Global Security
[13]The Naval Data Base.近代世界艦船事典
[14]MDC軍武狂人夢「江湖級護衛艦」
[15]Vietnam news「Myanmar warships dock in central Vietnam」(2012年3月15日)
[16]bmpd「Модернизация в Мьянме купленных китайских фрегатов」(2012年6月5日)

053H1Q型フリゲイト(ジャンフーII型/江滬II型)



#544「四平」は、053H型フリゲイト(ジャンフーI型/江滬I型)の5番艦として建造されたが、中国海軍は同艦を新型装備の運用試験艦として使用することを決定し、形式番号も「053H1Q型」に変更される事になった。

1983年11月、船舶総公司軍工部と海軍装備艦艇部は053H1型の一隻(「四平」)にフランスから購入したクルーゾ・ロワールT100C 100mm55口径コンパクト砲とNAJA光電子火器管制システムを搭載する計画を承認した。これを受けて、1984年2月には海軍装備艦艇部は「四平」を対象として、同艦を クルーゾ・ロワールT100C 100mm55口径コンパクト砲とNAJA光電子火器管制システムだけでなく、艦載ヘリコプターの運用試験艦とする事を決定した。同じ月には改装工事の研究作業が開始され、最終的に以下のような内容とされた。

1)後部100mm砲と対艦ミサイル連装発射機×1を撤去
2)艦後部にヘリコプター搭載用のヘリ格納庫と飛行甲板を設置
3)艦首部の一番砲塔にはクルーゾ・ロワールT100C 100mm55口径コンパクト砲を搭載
4)100mm砲の火器管制システムとしてフランス製NAJA光電子火器管制システムを搭載する
5)飛行甲板の下部に、イタリア製B515 3連装324mm短魚雷発射管2基を装備。搭載魚雷はA244/S 324mm短魚雷(搭載数24発)
6)7826型対潜爆雷デジタル式指揮装置1基と7826B型対潜魚雷デジタル式指揮装置1基を搭載

これらの改修によって、満載排水量は053H1型の1,700tから1,860tに増加した。#544「四平」は1985年12月24日に就役し、上記の新型装備の運用試験に供される事となった。その後、1987年には第二次改装が行われ、76式37mm連装機関砲×4の装備、電子戦装置の改良、348S対空捜索レーダーと348C情報処理システム、SJD-7対潜ソナー、348型火器管制レーダーの搭載、対艦ミサイルとしてSY-1/SY-1A/SY-2 の3種類のSSMの運用を可能とする等の改修が施された。

「四平」が搭載したクルーゾ・ロワールT-100C 55口径100mm単装砲はフランスのクルーゾ・ロワール社が開発した輸出向けのコンパクト自動速射砲である。砲重量の軽減と自動化が行われており、砲塔は無人化され2人の砲員は甲板下で給弾を担当する。砲架や砲楯は軽量化のため軽合金が多用されている。T-100Cは1980年代初めにフランスから2門購入され、そのうち1門が「四平」に搭載された。

T-100Cは、中国海軍の既存の79式56口径100mm連装砲(PJ-33)と比べると、半分程度の重量(79式35t:T-100C17t)でありながら、発射速度は79式が50発/分(2門)なのに対してT-100Cは90発/分(1門)と大幅に上回っており、システムの自動化や命中精度でもかなりの差をつけていた。中国海軍では、「四平」において各種の条件下での発射実験を多数実施し、いずれも良好な成果を収めた。クルーゾ・ロワールでは、中国海軍が艦砲の近代化のためT-100Cを追加発注することを期待したが、注文は上記の2門のみに終わった。中国海軍がT-100Cを購入したのは西側の進んだ艦砲の設計と技術を入手することが目的であり、その目的であればサンプル以上の数を購入する必要性は無かった。これは改革解放直後の中国の兵器輸入でまま見られた手法であった。

「四平」での運用試験を受けて、中国はT-100Cの技術をベースとして1990年代中頃から新型100mm艦載砲の開発を開始し、21世紀初めに実用化に成功し87式55口径100mm単装砲(H/PJ-87)として制式化された。新型100mm砲は、既存の79式56口径100mm連装砲(PJ-33)に比べてシステムの反応速度、発射速度、対空・対水上目標に対する威力などで大きな性能向上を達成し、安定性能や信頼性などでは原型のT-100Cよりさらに向上している。砲塔はレーダー反射率低減を目的とした複合材製ステルス・シールドが採用された。新型100mm砲は21世紀に入って就役した051C型駆逐艦(ルージョウ型/旅洲型)052C型駆逐艦(ルヤンII型/旅洋II型)052B型駆逐艦(ルヤンI型/旅洋I型)054型フリゲイト(ジャンカイI型/江凱I型)といった中国海軍の新鋭艦艇に搭載されている。

1970年代後半、西欧各国やソ連の海軍ではヘリコプターを水上戦闘艦に搭載することが広く普及するようになってきた。艦載ヘリコプターは、対潜哨戒、水平線外の目標探知、偵察警戒など幅広い任務をこなすことが可能であり、水上戦闘艦の作戦遂行能力を格段に向上させ得る画期的な存在であった。

中国では1970年代後半、西側との関係が改善すると立ち遅れた軍の近代化を推進するために、西側各国からの軍事技術導入を積極的に行うようになった。そのなかには艦載ヘリコプターとそれに必要な各種装備も含まれていた。1980年代初期、中国はフランスからAS-365N1ドーファンを輸入、その一部は対潜用機材を搭載した対潜哨戒型であった。AS-565は小型の機体であり、搭載できる対潜機材や兵装には限界があった。しかしAS-565は中国海軍にとって、対潜ヘリコプター運用のノウハウを確立するために大きな役割を果たした重要な機体であった。

中国海軍では艦載ヘリコプターの現物を入手に続いて、実際に艦上で運用するための研究を行うことを決めた。これまで、艦上でヘリコプターを運用した経験に乏しい中国海軍にとっては、艦載ヘリコプター運用のノウハウは空白であり、その蓄積が必要であった。中国海軍は、051型駆逐艦(ルダ型/旅大型)の1番艦#105「済南」と、「四平」にヘリ格納庫と発着甲板を設置して、ヘリコプター運用の試験艦に転用する事とした。「四平」の艦後部にはAS-365N1ドーファン1機の搭載が可能な、全長15.2m、幅8.5m、全高5.6mのヘリ格納庫と全長21.6m、幅10.8mの飛行甲板が設置された。飛行甲板には、ヘリコプターの運用に必要なフランス製のヘリ着艦補助装置と落下防止用のネット、着艦指示灯、可燃性気体検知警報装置と中国製の牽引装置、給油装置が搭載された。

「四平」では、対潜ヘリと連携した対潜攻撃方法の研究のため、中国海軍としては始めて324mm3連装短魚雷発射管とその指揮装置や新型ソナーを搭載し、艦上でのヘリコプターの運用とヘリと連携した対潜攻撃の2つの項目に関する各種試験が遂行されることになった。「四平」は当時の中国海軍で最も充実した対潜装備を有しており、対潜攻撃用ノウハウの構築に大きな役割を果たした。

「四平」で実施されたヘリコプターの運用試験によって、中国海軍は2,000tクラスのフリゲイトでのヘリコプター運用に関するノウハウの構築に成功し、その実績を背景として艦載ヘリを搭載した053H2G型フリゲイト(ジャンウェイI型/江衛I型)が建造されることになった。

本艦は中国海軍のフリゲイトとして初めて対潜ヘリ、フランス製100mm砲とその火器完成システム、324mm短魚雷とその統制システムを搭載し実際に運用することで各種ノウハウの蓄積を行い、中国海軍の近代化において重要な位置を占める艦となった。「四平」はその充実した対潜装備で演習において高い成果を収め、中国領海に潜入した国籍不明潜水艦を65時間に渡って追跡し領海から追い出した事などにより「中華反潜第一艦=中国初の対潜艦艇」の称号が与えられた。その後、「四平」の建造から20年を経た2005年には、第一線を退き訓練艦として大連の海軍訓練学校に配属転換される事が決定し、現在は練習艦任務に就いている。2010年7月28日には正式にフリゲイトとしては除籍され、練習艦「旅順」と改称された[1][2]。

性能緒元
基準排水量1,550t
満載排水量1,860t
全長103.2m
全幅10.8m
主機ディーゼル 2軸
 12PA68TC/12E390VAディーゼル(8,000馬力)×2基
速力26kts
航続距離4,000海里/14kts、2,700海里/18kts
乗員185名

【兵装】
対艦ミサイルSY-1/SY-1A/SY-2/連装発射筒(7226型)1基
対潜ロケット250mm対潜ロケット/81式250mm5連装対潜ロケット発射機(RBU-1200)2基
魚雷A244/S 324mm短魚雷/B515 3連装324mm短魚雷発射管2基
爆雷64式爆雷投射機(BMB-24)4基
クルーゾ・ロワールT100C 100mm55口径コンパクト砲1基
近接防御76式37mm連装機関砲4基
搭載機Z-9C対潜ヘリコプター1機


【電子兵装】
対空対水上レーダー354型(Eye Shield)1基
火器管制レーダー352型(Square Tie)SSM用1基
 341型(Rice Lamp)機関砲用1基
航海レーダーRM-1290(Racal Decca)1基
火器管制装置NAJA光学電子火器管制システム砲用 
ECMシステムRWD-8 
デゴイ発射装置SRBOC Mk33 6連装発射機、もしくは中国製26連装発射機2基
ソナーSDJ-7 
衛星通信用アンテナ  1基
※電子装備については複数の説があるが、ここの記述は主に「Jane's fighting ships 2007-2008」に依拠している。

同型艦
1番艦四平→旅順Sìpíng→Lǚshùn5441984年11月15日起工、1985年9月29日進水、1985年12月24日就役、2005年大連の海軍訓練学校所属、2010年7月28日練習艦「旅順」と改名



【参考資料】
Jane's fighting ships 2007-2008 (Jane's Information Group)
「碧海争鋒-中日両国駆護艦艇50年的発展対比與反思」『戦場文集』第2巻 2006年6月専刊 (新民月報社)
「中国053系列護衛艦外形識別」『兵工科技』2006年1月号 (周録陽/兵工科技雑誌社)
「江湖級護衛艦的発展及現代化改装前景分析」『艦載武器』2007年2月号 (銀河/中国船舶重工業集団公司)
「幕後英雄-中国海軍試験艦専題」『艦載武器』2006年2月号 (天一、祁長軍/中国船舶重工業集団公司)
世界の艦船No.647(海人社)
人民網-「"中華反潜第一艦"将改為海軍学員海上訓練艦」
東方網
大旗網-飛揚軍事
ChineseDefence Today
Global Security
The Naval Data Base.近代世界艦船事典

China Defense Blog「Two Jianghu class (Type 053H) class FFG related updates.」(2010年7月31日)[1]
中国広播網「海军“旅顺”舰命名仪式7月28日举行」(2010年7月28日)[2]