056型コルベット(056型軽型護衛艦/NATOコード名 JANAGDAO class[13])は2010年11月に中国軍香港駐留部隊司令員が香港大学を訪問した際に、大学に送った艦艇模型によってその存在が明らかになった新型艦艇[1]。「056型」とは模型の舷側に記載された艦番号に由来する通称であり、海軍での制式名称は確認されていない。
2012年5月時点で上海と広州の造船所で4隻の建造が確認され[5]、さらに内陸の武漢市にある武漢造船廠、遼東半島の大連にある遼南造船廠でも056型の建造が行われていることが明らかになった[10][11]。4箇所の造船所が同時に建造に携わるという例を見ない量産体制が採られている事になり、今後急速に056型の建造が行われるだろう。2013年2月時点で、20隻の建造が確認されており[12]、参考資料[14]ではその建造数は少なくとも30隻になると推測している。
【性能】
056型に関する情報は少なく、詳細は不明な点が多い。船体サイズは満載排水量1,300~1,440t、全長89~95.5mと資料によって数値が異なっている([11][13][14]など)。船体は中央船楼型で、ステルス性を重視して上部構造物や煙突にはいずれも傾斜が付けられており、上甲板の艤装品のカバーもステルス性改善のための設計を採用している[1]。ただし艦尾(ヘリコプター発着甲板下)には大きな開口部があり、ステルス性の面では不利になると見られる。
船体設計では、喫水線下の面積を減少して航行時の水の抵抗を軽減するために、V底型船体を採用している[11]。056型は、シーステート8の状態での洋上航行能力を備えている[11]。
1~3番艦は艦首から艦橋まで繋がったブルワークだったが、進水後に054A型フリゲイト(ジャンカイII型/江凱II型)後期建造艦に似た艦橋直前に切欠を設けたブルワーク形状に変更された[11]。艦橋直後には平面構成の塔型マストが配置されており、マスト頂部には対空/対水上捜索レーダーと航海レーダー、マスト基部には管制用レーダー(艦載砲/対艦ミサイル用)が搭載されているのが見て取れる[1]。2012年末には建造中の056型でマスト基部の形状を垂直だったものを傾斜式に変更したタイプが確認されており、これは電波ステルス性向上のための措置と見られている[11]。船体側面には船体横揺れを軽減するためのフィン・スタビライザーが装備されている。艦尾形状はトランサム・スターンを採用している。
搭載機関は、フランス製のピールスティック16PA6V-280ディーゼル・エンジンを陝西柴油機廠でライセンス生産したものを2基搭載していると見られており、推進軸は2軸[11]。最高速力は25Ktsで、航続距離は巡航速力18Ktsで2,000海里[11]。ディーゼル・エンジンは減振装置を内蔵した架台に設置した上で、機関室壁面に遮音材料を施すことで、騒音や振動発生率が高いというディーゼル・エンジンの問題に対する対策を講じている[11]。機関室は無人化がなされているが、これは省力化の一環[11]。
056型の乗員は60名と、同艦によって更新される053H型フリゲイト(ジャンフーI型/江滬I型)の190名より大幅に減少しており、排水量430tの037型哨戒艇(ハイナン型/海南型)の78名よりも少なくなっている[13]。これは兵装を比較的軽いものに留め、省力化を大幅に進めたことによって可能となった。これにより、乗員1人あたりのスペースは053Hフリゲイト型や037型哨戒艇よりも遥かに余裕のあるものとなり、洋上での活動において乗員の戦闘力を維持する上で見逃せない効果がある。船体の大型化により、056型コルベットの作戦行動範囲は037型哨戒艇の4倍となり、第一列島線の内側の海域での様々な任務に対応する事が可能となった[17]。
【兵装】
056型は艦首部に054A型フリゲイトと同じPJ-26 60口径76.2mm単装砲を1門装備しているほか、艦橋構造物の両側面にH/PJ-17型30mm単装機関砲各1基を搭載している。近年洋上や港湾での非対称脅威に対応するため、各国海軍は機関砲と光学センサーを組み合わせて艦内から遠隔制御するRWS(Remote Weapon Station:遠隔操作式無人銃架)の装備を進めているが、056型もその流れに沿ったものと思われる。このRWSは銃架右側に銃手席があり、銃側で手動射撃する事もできる。
艦対艦ミサイルはマストと煙突の間にYJ-83(鷹撃83/C-803)の連装発射機2基が搭載されている[11]。煙突の後ろにある上部構造物後端には、近接防空用のHQ-10対空ミサイルの8発射機が設置されている。対潜装備としては後部上構内に324mm3連装魚雷発射管3連装魚雷発射管2基を装備しており、発射の際は舷側ドアを開けて魚雷を投射する。056型は、これまで中国海軍で広く用いられてきた対潜前投兵器である対潜ロケットは装備していない。ソナーは艦首のバルバス・バウの部分に搭載される[11]。
船体後部には着艦拘束装置を備えたヘリコプター甲板があるが、ヘリコプター格納庫は無く艦固有の艦載ヘリコプターは搭載しない。2012年5月に撮影された1番艦の進水直前の写真を見ると、上部構造物後端に左右2箇所の大型開口部があるのが確認でき、この場所に艦載UAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人機)が搭載される可能性がある。
【056「対潜型」】
056型は4箇所の造船所で建造されているので、極力相違点が出ないように規格の標準化や品質の統一性が追及されている[11]。一方で、建造過程で細かな変更が施されているのも確認されており、マスト基部の形状の変更や煙突頂部に赤外線低減のためカバーを施すなどの事例が確認されている。
▼上から、艤装中の1番艦「恵州」(この後3番艦に準じた改装を実施)、2段目が3番艦「梅州」、3段目が2番艦「恵州」(奥の艦は6番艦「欽州」)、一番下が9番艦「吉安」。赤で囲った所が主な変更箇所。ブルワーク、煙突頂部、艦尾開口部、前部マスト基部など様々な箇所で相違があるのが見て取れる
派生型の中でも特に注目されているのが、滬東中華造船廠で建造され2013年11月20日に進水した056型の17番艦である。同艦は新たに可変深度ソナーを搭載し、艦尾にはソナーを海面に降ろすための開口部が設けられた。ソナーを強化した事から、潜水艦探知能力を高めた「対潜型」という通称が付けられているが、公式の型式名についてはまだ明らかにされていない。
▼進水する056型コルベット「対潜型」
ただし、「対潜型」といっても、可変深度ソナーの装備以外には相違点は確認されておらず、056基本型と同じく艦固有の対潜兵器は短魚雷発射管のみで、ヘリコプター甲板はあるが格納庫を備えていないため長期間にわたる洋上でのヘリコプターの運用・整備は困難である事から[17]、単独での対潜能力強化には限度がある。少なくとも、可変深度ソナーの装備で潜水艦の探知能力が向上したのは間違いなく、他の艦艇や航空機と連携して対潜作戦を実施する事で総体としての対潜警戒能力を向上させ得るといえる。056「対潜型」の建造はまだ一隻のみであるが、このタイプの056型が今後も建造が継続するのか、あるいはヘリコプター格納庫を備えるなど対潜能力を高めた拡大改良型の開発へと進むのかが注目される。
【今後の見通し】
中国海軍は従来の沿岸防衛型の海軍から外洋艦隊化へ変化が進み、駆逐艦やフリゲイトも外洋での活動を想定して大型化していった。その反面、領海警備用の艦艇については1970~80年代に大量建造された053H型、053H1型や037型哨戒艇(ハイナン型/海南型)が退役の時期を迎えつつあり更新が必要だった。056型はその代替として比較的低コストで調達可能な艦として設計され、急速に整備が進められているものと思われる。
今後、056型は尖閣諸島や南沙諸島(スプラトリー諸島)など中国が領有を主張している紛争・係争海域に、領海警備艦として海監などの海洋監視機関の巡視船と共に積極的に投入されるであろう。航洋性能を重視する半面、武装は比較的軽度な武装に留めているのは、056型が平時の領海警備や対テロ・海賊対策などへの対処を重視した艦である事を示していると考えられる。ただし、重武装ではないものの対空、対艦、対潜の各種武装を備えており、ヘリコプター甲板も有しているのでそれぞれの脅威に対して一定の対処が可能となっている。
中国では、056型の輸出を目指しており解放軍系の企業である保利公司によって各国への売込みが図られている[11]。2013年8月10日には、バングラデシュが056型を導入するとの報道がなされた。報道によると、バングラデシュは056型2隻を輸入、その後さらに2隻をライセンス生産する事で、自国での艦艇製造能力を向上させることを計画しているとの事。
■性能緒元
満載排水量 | 1,365t |
全長 | 88.9m |
全幅 | 11.14m |
喫水 | 4m |
主機 | S.E.M.Tピールスティック16PA6V-280ディーゼル 2基2軸 |
速力 | 25kts |
航続距離 | 2,000nm/18kts |
乗員 | 60名 |
【兵装】
対空ミサイル | HQ-10艦隊空ミサイル/8連装発射機 | 1基 |
対艦ミサイル | YJ-83(鷹撃83/C-803)/連装発射筒 | 2基 |
砲 | PJ-26 60口径76.2mm単装砲 | 1基 |
近接火器 | H/PJ-17型30mm単装機関砲 | 2門 |
12.7mm重機関銃 | 2門(#596 #597) | |
魚雷 | YU-7 324mm短魚雷/B515 324mm3連装魚雷発射管 | 2基 |
【電子兵装】(推定)[15]
対空対水上レーダー | SR64 | 1基 | |
火器管制レーダー | H/LJP-349型(TR47) | 砲用 | 1基 |
航海レーダー | 760型 | 1基 | |
光学電子/赤外線照準装置 | 砲用 | 1基 | |
戦闘システム | |||
電子戦システム | |||
チャフ/フレア発射装置 | 9連装デコイ発射機 | 2基 | |
ソナー | バウ・ソナー | 1基 | |
可変深度ソナー | 1基(17番艦のみ) | ||
データリンクシステム | |||
衛星通信用レドーム | 1基 |
■同型艦
1番艦 | 蚌埠 | Bàngbù | 582 | 滬東中華造船廠で建造。2012年5月23日進水、2013年3月12日就役 | 東海艦隊所属 |
2番艦 | 惠州 | Huìzhōu | 596 | 広州黄埔造船廠で建造。2012年6月3日進水。2013年7月1日就役 | 南海艦隊(香港分隊)所属 |
3番艦 | 梅州 | Méizhōu | 584 | 武漢造船廠で建造。2013年7月31日進水。2013年7月29日就役 | 南海艦隊所属 |
4番艦 | 大同 | Dàtóng | 580 | 遼南造船廠で建造。2012年8月10日進水、2013年5月18日就役 | 北海艦隊所属 |
5番艦 | 上饒 | Shàngráo | 583 | 滬東中華造船廠で建造。2012年8月19日進水。2013年6月10日就役 | 南海艦隊所属 |
6番艦 | 欽州 | Qīnzhōu | 597 | 広州黄埔造船廠で建造。2012年8月30日進水。2013年7月1日就役 | 南海艦隊(香港分隊)所属 |
7番艦 | 百色 | bǎisè | 585 | 武漢造船廠で建造。2012年10月25日進水。2013年10月12日就役[16] | 南海艦隊所属 |
8番艦 | 営口 | Yíngkǒu | 581 | 遼南造船廠で建造。2012年11月18日進水。2013年8月1日就役 | 北海艦隊所属 |
9番艦 | 吉安 | Jíān | 586 | 滬東中華造船廠で建造。2013年2月25日進水。2014年1月8日就役 | 東海艦隊所属 |
10番艦 | 掲陽 | Jiēyáng | 587 | 広州黄埔造船廠で建造。2013年1月26日進水。2014年1月26日就役 | 南海艦隊所属 |
11番艦 | 広州黄埔造船廠で建造中。2013年5月30日進水。 | ||||
12番艦 | 泉州 | Quánzhōu | 588 | 滬東中華造船廠で建造中。2013年6月25日進水 | |
13番艦 | 592 | 武漢造船廠で建造中。2013年7月16日進水 | |||
14番艦 | 威海 | Wēihǎi | 590 | 遼南造船廠で建造。2013年8月1日進水、2014年3月15日就役 | 北海艦隊所属 |
15番艦 | 遼南造船廠で建造中。2013年8月1日進水。 | ||||
16番艦 | 594 | 広州黄埔造船廠で建造中。2013年11月30日進水 | |||
17番艦(対潜型) | 滬東中華造船廠で建造中。2013年11月20日進水 | ||||
18番艦 | 武漢造船廠で建造中。2013年11月12日進水 | ||||
19番艦 | |||||
20番艦 |
▼ドックから海面に下ろされる直前の2番艦「恵州」。バルバス・バウの形状がよく分かる。公試中の写真とブルワーク形状が異なるのが確認できる
▼艤装工事中の1番艦と2番艦。ヘリコプター発着甲板下の開口部にはRIB(Rigid-hulled inflatable boat:複合型ゴムボート)が見える
▼後方から見た056型。HQ-10対空ミサイル8連装発射機の下にはUAV用の格納庫(?)が左右にあり、艦内に収納されている3連装短魚雷発射管も確認できる
▼054A型フリゲイト(奥)と並ぶ056型2番艦「恵州」(手前)。054A型と比較してかなり小型である事が分かる
▼艤装工事中の3番艦。艦橋やマスト基部、ブルワークなどの形状が1番艦と若干異なる。1、2番艦も艤装中に形状をこちらに変更している
▼4番艦「大同」(#580)。赤矢印:普段は艦内に収容されている3連装短魚雷発射管をハッチをあけて展開しているのに注意。黄色矢印は排熱・排気対策で設けられたファンネルキャップ。緑矢印はH/PJ-17型30mm単装機関砲
▼056型コルベット1番艦(#582)の海軍正式引渡し式動画。主砲、チャフ、魚雷発射管、対艦ミサイル、30mmRWS、艦橋、船員室など
▼056型コルベット1番艦(#582)の航海動画。主砲、HQ-10対空ミサイル、30mmRWS、艦橋、CICなど
【参考資料】
[1]广闻「浅析中国海军新型056型护卫舰」『舰载武器』2011年1月号(中国船舶重工業集団公司)26~29頁
[2]世界の艦船編集部「新型コルベットの技術」『世界の艦船』2008年11月号/No.698(海人社)82~87頁
[3]China Defense Blog「056 Class Corvette Project Update」(2012年5月19日)
[4]铁血社区-海军论坛「056型护卫舰22日晚下水过程回放」(2012年5月23日)
[5]China Air and Naval Power「Recent activities around Chinese shipyards」(2012年4月27日)
[6]China Defense Blog「4th 056 hull emerges」(2012年5月29日)
[7]HSH上海发烧友论坛-海洋舰艇科技发烧版「东亚某国596舰下水中…全球首发图!(更新舷号横幅清晰图)」(2012年6月2日)
[8]HSH上海发烧友论坛-海洋舰艇科技发烧版「转秋雨056图细部」(2012年6月1日)
[9]星島環球報「解放军第2艘056型护卫舰下水 正造更多同型舰」(劉浩英/2012年6月5日)
[10]「武漢造船廠将生産056型導弾護衛艦」『漢和防務評論』2012年6月号(加拿大漢和信息中心)24頁
[11]MDC軍武狂人夢「056護衛艦」
[12]China Defense Blog「582, head of the class.」(2013年2月24日)
[13]naval-technology.com「China Navy receives first Type 056 Jiangdao-class corvette」(2013年2月27日)
[14]Janes公式サイト「China inducts first Type 056 corvette」(Jon Rosamond/2013年2月28日)
[15]小飛猪・烽火「056型軽型護衛艦詳解」『現代艦船』2012-07B(《現代艦船》雑誌社)14~17頁
[16]新華網「最新056型护卫舰百色号服役 今年服役第八艘」(2013年10月14日)
[17]銀河「中国海軍的水面反潜艦」『艦載武器』2014年3月号/No.189(中国船舶重工業集団公司)40~52頁
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