2014年11月8日土曜日

GP-1 152/155mmレーザー誘導砲弾



性能緒元(155mm砲弾のデータ)
口径155㎜
全備重量52kg
全長1.305mm
弾頭HE-FRAG
射程4~20km
作動確立90%
初弾命中確立90%
誘導方式慣性航法誘導(中間)/セミ・アクティブ・レーザー誘導(終末)

中国では、アメリカやソ連でのレーザー誘導砲弾の実用化を受けて、第7次五ヵ年計画(1986~1990年)における兵器開発計画の1つとしてレーザー誘導砲弾技術に関する技術研究を開始した[1]。

1990年代に入ると、ロシアの計器設計局(KBP)からクラスノポール セミ・アクティブ・レーザー誘導砲弾システムを少数購入、その後クラスノポールのライセンス生産権を獲得[2]。ロシアから得られた誘導砲弾技術と1980年代以降の国内研究を合わせて、1990年代末期にはレーザー誘導砲弾の実用化に向けた作業が進められることになった[1]。また、1990年代の電子機器の小型化技術の進展を踏まえて、152/155mm砲弾よりも小型の122mm榴弾砲や120mm迫撃砲用の誘導砲弾の開発にも着手した[1]。

中国北方工業集団公司(NORINCOでは中国軍向けに152/155mmレーザー誘導砲弾の生産を行うと共に、2004年には輸出市場向けに「GP-1 152/155mmレーザー誘導砲弾」(中国語ではGP-1型155毫米激光末制導炮弾)の名称で各国への売込みを開始した[2]。2007年にはアラブ首長国連邦への輸出に成功し、1000発以上のGP-1 155mm砲弾が納入されている[2]。

【性能】
GP-1は、戦車や装甲車、艦艇、砲兵部隊や指揮所、野戦陣地などのピンポイント攻撃を行うことを想定している[1][2]。

GP-1の兵器システムは、誘導砲弾本体、152/155mm榴弾砲、レーザー測遠照射装置、レーザーパルス同調装置、通信装置などで構成されている[1][2]。榴弾砲や通信装置などには、レーザー誘導砲弾を発射するための特別な改造を施す必要は無く、誘導砲弾とレーザー測遠照射装置、レーザーパルス同調装置を用意すれば通常の152/155mm榴弾砲でも誘導砲弾の使用が可能となる。

誘導砲弾本体は、155mm砲弾の場合は全長1,305mm、全備重量52kg、有効射程は4~20kmで、最高速度36km/hまでの移動目標に対する攻撃が可能[1][2]。砲弾の前部に誘導・制御系統を搭載、中央が弾頭部、後部は射程延長用のロケットモーター4基を内蔵している[1]。砲弾前部と尾部にはそれぞれ4枚の翼が内蔵されており、飛翔時に展開されて弾道の安定と制御に使用される[1]。砲弾頂部のレーザーシーカーには防護キャップが装備されているが、これは飛翔中に自動的に脱落するため発射時に取り外す必要は無い[1]。

GP-1を運用する際には、前線に派遣された観測班がレーザー測遠照射装置を使って目標の座標情報を観測して、砲兵中隊の指揮所に通信[1]。レーザー測遠照射装置は三脚上に設置されており、500mから5,000mまでの目標へのレーザー照射が可能[2]。中隊本部では目標の位置と射撃諸元(方位、高度、使用する装薬数など)を算出して、隷下の榴弾砲陣地に伝達[1]。発射を指示された榴弾砲では諸元に基づいてGP-1砲弾を発射する[1]。

発射された砲弾は、発射後に砲口から20~30mほど離れた所で後部の翼を展開させて弾道を安定させる[1]。この時点では誘導システムは作動しておらず、通常の弾道飛行を続けるが、射程を延長したい場合は、砲弾が弾道コースの頂点に達した時点で、ロケットモーターを作動させて飛翔距離を延伸する[1]。同時に慣性航法装置を作動、前翼も展開させて姿勢制御を行い砲弾が一定の飛翔コースを保つようにする[1]。

砲弾発射は通信装置を経由して前線観測班に伝えられる[2]。砲弾が目標まで2,000~3,000mまで接近した段階で、前線観測班は目標に対してレーザー光線の照射を開始する[1]。レーザー光線をGP-1の弾頭部シーカーが探知すると、終末誘導段階に移行、前翼による姿勢制御で砲弾を目標に対して急降下させ、35~45度の角度で目標上面に突入する[1][2]。アメリカのカッパーヘッド レーザー誘導砲弾がレーザー照射点に突入するのに対して、GP-1(やその元になったクラスノポール)は目標上面から突入することによりカッパーヘッドよりも目標に対する破壊力を高めているとされている[3]。

前線観測班のレーザー照射によるセミ・アクティブ・レーザー誘導方式は、完全自律誘導型に比べて砲弾の価格が安価で済み、レーザーが照射されていればどのような目標への攻撃も可能という利点がある[3]。しかし、観測班を展開させていなければ運用できず、目標に接近する必要のある観測班がレーザー照射を探知されて、観測班が反撃に会う、もしくは発煙弾を発射されて目標を確認できなくなるなどの対応策をとられた場合、誘導が出来なくなるリスクが存在する[2][3]。また、悪天候により雲や霧が発生している場合には、レーザー光線が減衰するために使用が制限されてしまう[2][3]。

NORINCOでは、この問題を解決するためにGP-1の誘導システムに完全な「打ちっぱなし」が可能な誘導システム(ミリ波レーダー誘導システムなど)を組み込んだ改良型の研究を行っているとの事[1]。

【参考資料】
[1]楊揚・任保全「炮射精霊-国産新型GP-1型155毫米激光末制導炮弾」(『兵工科技増刊 2008珠海航展専輯』/兵工科技雑誌社)69~71ページ
[2]ChineseDefenceToday「GP1 152/155mm Laser-Guided Projectile」
[3]江畑謙介「ロシアのレーザー誘導砲弾」(『軍事研究』1998年8月号/ジャパン・ミリタリー・レビュー)84~95ページ

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