2014年11月3日月曜日

77式水陸両用装甲兵員輸送車(WZ-511)

▼77I式水陸両用装甲兵員輸送車。車体各部に牽引用装備を搭載している。

▼77-II式水陸両用装甲兵員輸送車

▼装甲救護車型。車体の前後が延長されるなど63A式水陸両用戦車(WZ-213/ZTS-63A)に準じた改良が施されたタイプであることが分かる。


▼装甲救護車の内部


性能緒元(77-I式)
重量18~18.76トン
全長7.15m
全幅2.16m
全高3.20m
エンジン12150L-2液冷ディーゼル 400hp
最高速度36km/h(砲牽引時は22.5km/h)
浮航速度12km/h
航続距離370km
武装12.7mm重機関銃×1(500発)
装甲溶接鋼板(全周7.62mm弾防御)
搭載能力最大3トン
乗員(兵員輸送任務時)2名(車長、操縦手)+歩兵20名
(85mm対戦車砲牽引時)車長、操縦手+砲員8名+砲弾30発
(122mm榴弾砲牽引時)車長、操縦手+砲員8名
(救護任務時)車長、操縦手+負傷兵2~3名(担架に横臥)

77式水陸両用装甲兵員輸送車はソ連のBTR-50水陸両用装甲兵員輸送車を参考にして開発された水陸両用の装軌式APCである。63式水陸両用戦車に追随可能な水陸両用装甲車として、兵員輸送任務や沿岸部での野砲牽引、物資輸送任務に当たることが想定されてた[4]。

開発作業は1965年4月に開始され、2種類の試作車が製造され各種試験と改造が行われた。その後、初度量産を経て、1977年11月に設計案が軍の承認を受けて「77-I式水陸装甲輸送車」として制式化された[3]。

77-I式は、63式水陸両用戦車と共通の車体を使用しており、砲塔を撤去して車体中央の戦闘室の容積を拡大して兵員搭乗区画に転用している。これは、ソ連がPT-76水陸両用戦車をベースにしてBTR-50水陸両用装甲兵員輸送車を開発したのと同じ手法であり、77-I式の開発においてBTR-50が参考にされたことが窺える。

車内には、操縦手と車長以外に20名の歩兵(16名説もある[5]。)、若しくは8名の砲兵と砲弾30発(85mm砲牽引時)を搭載する[4]。車体後部は動力部であり降車用ハッチは無いので、搭乗歩兵は車体上部のハッチから乗下車を行う。水上航行用に車体前部には波避け用のトリムベーンが装着されている。エンジンは63式水陸両用戦車と同じ12150L-2型液冷ディーゼルエンジン(400hp)を搭載している。車体後部には二基のウォータージェットが装備されており、これによって最高浮航速度12kmを発揮する。本車はNBC防護システムを装備していない[2]。

77-I式は主に85mm対戦車砲や122mm榴弾砲、120mm迫撃砲の牽引車として使われており、そのため油圧ウィンチや砲固定具等の牽引に必要な各種装備が搭載されている[3]。

77-I式の実用化に続いて、兵員輸送能力を向上させた派生型の開発が行われている。こちらは1978年に開発に着手しており、1980年には「77-II式水陸装甲輸送車」として制式化されている[1][3]。

77-II式は、77-I式に装備されていたウィンチや車体後部の牽引用フックは撤去され、車体後部の兵員室は若干天井が高くなっている。車体右側面のガンポートと外部視認窓は廃止され、代わりに兵員や負傷者を搬入するための大型ハッチが取り付けられている[3]。これにより、車体上部のハッチを使用するよりも迅速な降車が可能となっており、降車時に敵の射撃を受ける危険性も減少している。固有武装としては兵員室前方右部の12.7mm重機関銃に加えて、反対側の左部にも分隊支援火器を装備可能な旋回式キューポラが設置されている[3]。この他、兵員室左側には二箇所のガンポートと外部視認窓があり、乗車戦闘も可能。

77式シリーズは中国海軍陸戦隊や陸軍の水陸両用部隊向けに200~300輌が生産された。21世紀に入ると、洋上航行性能を改善した63A式水陸両用戦車(WZ-213/ZTS-63A)が実用化されたが、それに合わせて77式についても車体の前後にフロートを装着したりエンジン出力強化などの改修が行われたとの情報もある[5]。

77式シリーズは、05式水陸両用歩兵戦闘車(ZBD-05/ZBD-2000)シリーズの量産に伴って退役が進んでいく物と思われる。

【77式派生型】
77-I式水陸両用装甲兵員輸送車WZ-511-11965年から開発された水陸両用APC兼砲牽引車型。兵員輸送任務のほか物資輸送や砲牽引車としても運用された
77-II式水陸両用装甲兵員輸送車WZ-511-2兵員輸送車型。牽引用装備を撤去、兵員室の拡大や大型ハッチの装備など兵員搭乗に配慮した改良が行われる
76式水陸両用装甲回収車WZ-401装甲回収車型
HQ-2 SAM搭載型 77式の車体を原型として開発された自走SAM発射機
SY-1 SSM搭載型 77式の車体に、SY-1対艦ミサイルを搭載した自走対艦ミサイル発射機
101/102石油工程車 77式の搭載力を生かして砂漠などの不整地で、石油掘削用機材や各種物資を輸送するために開発された車両。
77式近代化改装型 水上航行性向上のため、車体前後にフロートが追加、エンジン出力を向上させるなどの改良が加えられたタイプ。
装甲救護車型最近になって存在が確認された77式ベースの水陸両用装甲救護車。兵員室を上部に拡大して車内容積を確保している。車体側面の乗降用ハッチは77-II式と同じ大型ハッチ。

【参考資料】
[1]坦克装甲車両 総第228期2005年第2期「水中蛟龍-中国63式水陸坦克」(坦克装甲車両雑誌社)
[2]Chinese Defence Today「TYPE 77 ARPHIBIOUS ARMOURED CARRIER」
[3]中国武器大全「中国77-1式水陆装甲输送车」
[4]坦克與装甲車両「中国77-1式水陆装甲输送车」
[5]『Jane`s Armour and Artillery 2006-2007』302頁。

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