▼63II式水陸両用戦車(WZ-211-2)防盾の上に「揚州」レーザー測遠器を搭載している。
▼1990年代に開発された火力強化型、63G式水陸両用戦車(WZ-211G)。車体前面に船型の水避け版を装着しているのが分かる。向かいの車両は63A式水陸両用戦車。
■性能緒元
重量 | 18.4トン |
全長 | 7.288m |
全幅 | 3.20m |
全高 | 2.522m |
エンジン | 12150L2液冷ディーゼル 400hp(63I式水陸両用戦車) |
最高速度 | 64km/h |
浮航速度 | 12km/h |
航続距離 | 370km |
武装 | 62-85TC 85mmライフル砲×1(47発) |
12.7mm重機関銃×1(500発) | |
7.62mm機関銃×1(2,000発) | |
装甲 | 30~45mm(砲塔) |
10~15mm(車体) | |
乗員 | 4名 |
旧ソ連製のPT-76水陸両用戦車をごく少数ライセンス生産した中国が、それをベースに発展させたのが63式水陸両用戦車である。開発は1958年に開始、1959年には最初の試作車が完成したがこの車両は問題が多発したためにさらに改良が加えられる事になった。1960年から少数の車両が中国軍に配備され実用試験が行われた。この結果を踏まえて実用型の設計が行われ、1963年4月13日に制式採用が決定され「63式水陸坦克」(通称"63水")と命名された。
PT-76のライセンス型である60式水陸両用戦車の車体の面積を拡大して浮力を確保し、合わせて車体前部中央にあった操縦席を左側にずらしてターレット・リング径の大きな85mmライフル砲装備の卵型砲塔(62式軽戦車と同一)を搭載できるようになっている。射撃統制システムは62式軽戦車同様に簡単で旧式なものだが、1970年代半ばに登場した63II式水陸両用戦車(WZ-211-2)は「揚州」レーザー測距器と弾道計算機、暗視装置が取り付けられている。ただし、砲は安定化されておらず行進間射撃は不可能なのは原型と同じ。63II式は、この改修によりオリジナルよりも重量が2.5tほど増加したのに対応して、出力の大きい液冷ディーゼル・エンジン12150L2(400hp)を搭載した。この結果出力/重量比が増大し、機動性は向上した。水上での浮航方式は、PT-76と同じウォータージェット方式が用いられている。
63式は幾つかの派生型が作られた。砲塔を取り除き兵員の乗車スペースを設けた77式水陸両用装甲兵員輸送車や76式水陸両用装甲回収車、122mm水陸両用自走榴弾砲(中国)などである。1990年代には63式の発展型として、洋上航行性能を改善、戦車砲を105mmライフル砲に換装して新型の射撃統制装置を搭載した63A式が開発されている。
本車は約800輌が中国軍向けに生産され海軍陸戦隊と陸軍偵察部隊に配備されたほか、ヴェトナム戦争では北ヴェトナムにも供与され、スーダンその他のアフリカ諸国にも輸出されている。中越紛争では多数の車両がヴェトナム軍との戦いに投入され河川渡河でその水上航行能力を発揮したが、ヴェトナム軍の対空機関砲の水平射撃などの攻撃に対して装甲防御力の弱さからかなりの損害を出す事になった。中国軍では、対抗して12.7mm機関銃に防弾板を装着するなどの対応を施している。
63式水陸両用戦車 | WZ-211 | 1960年から配備が開始された水陸両用戦車。ソ連のPT-76の拡大改良型として開発された。 |
63I式水陸両用戦車 | WZ-211-1 | エンジンを12150L2(400馬力)に換装、機関室上部に補助燃料タンクを追加。 |
63II式水陸両用戦車 | WZ-211-2 | 1970年代半ばに登場。「揚州」レーダー測遠器と弾道計算機、暗視装置を装備。 |
63G式水陸両用戦車 | WZ-211G | 1990年代に開発された火力強化型。83式105mmライフル砲を搭載、砲塔を上部に拡大している。試作のみ。 |
63A式水陸両用戦車 | WZ-213 | 軍の制式名称はZTS-63A。63G式に続いて登場した火力強化型。砲塔を換装し車体の前後を延長した。1998年に制式化され、63式に変わって海軍陸戦隊への配備が行われている。 |
63A1式水陸両用戦車 | WZ-213-1 | 軍の制式名称はZTS-63A1。63式の装甲強化型。砲塔前面には複合装甲が採用され、爆発反応装甲の装着も可能。重量増加に対応してエンジン出力が強化。 |
03P式水陸両用戦車 | IDEX2007で紹介された63A式の輸出向け車両。580馬力のディーゼルエンジンを搭載。 | |
122mm水陸両用自走榴弾砲(中国) | 上陸部隊の火力支援用として開発。試作のみ。 | |
77-I式水陸両用装甲兵員輸送車 | WZ-511-1 | 1965年から開発された水陸両用APC兼砲牽引車型。兵員輸送任務のほか物資輸送や砲牽引車としても運用された |
77-II式水陸両用装甲兵員輸送車 | WZ-511-2 | 77-I式の改良型。牽引用装備を撤去し兵員輸送能力の向上を行う |
76式水陸両用装甲回収車 | WZ-401 | 装甲回収車型 |
HQ-2 SAM搭載型 | 77式の車体を原型として開発された自走SAM発射機 | |
SY-1 SSM搭載型 | 77式の車体に、SY-1対艦ミサイルを搭載した自走対艦ミサイル発射機 | |
101/102石油工程車 | 77式の搭載力を生かして、砂漠などの不整地で石油掘削用機材や各種物資を輸送するために開発された車両。 | |
77式近代化改装型 | 水上航行性向上のため、車体前後にフロートが追加、エンジン出力を向上させるなどの改良が加えられたタイプ。 | |
装甲救護車型 | 最近になって存在が確認された77式ベースの水陸両用装甲救護車。兵員室を上部に拡大して車内容積を確保している。車体側面の乗降用ハッチは77-II式と同じ大型ハッチ。 | |
水陸両用装甲工兵車 | 制式名称は不詳。63式をベースとしたと見られるシャーシに、大型のドーザーブレードとパワーショベルを搭載した本格的な装甲工兵車輌。 |
【参考資料】
『月刊グランド・パワー』 (No.122)2004年7月号「中国戦車開発史[2]」(古是三春/ガリレオ出版)
戦車名鑑-現用編-(後藤仁、伊吹竜太郎、真出好一/株式会社コーエー)
Chinese Defence Today
中国武器大全
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