▼新星2002A/ZFB-05A装輪装甲車
▼新星2002型装輪装甲車(拡大型。PKO派遣部隊の車両)
▼新星2002型装輪装甲車(拡大型)
▼車体後部ハッチから降車する対テロ部隊
▼操縦席配置。(C)陝西宝鶏専用汽車有限公司
▼情報端末用ノートパソコン。(C)陝西宝鶏専用汽車有限公司
▼3種類の兵装を搭載したZFB-05。左から12.7mm重機関銃搭載型、23mmチェーンガン搭載型、35mm擲弾発射機搭載型。これらの車両はチャドへ輸出された。
▼コンゴ共和国に輸出されたZFB-05。兵装は23mmチェーンガン。
▼装甲救護車型
■性能緒元
車体重量 | 4.8t |
全備重量 | 5.5t |
全長 | 4,790mm(初期型) |
5,200mm(拡大型/新星2002A) | |
全幅 | 2,000mm(初期型) |
2,060mm(新星2002) | |
2,190(拡大型) | |
2,230mm(新星2002A) | |
車高 | 1,815mm(初期型) |
1,915mm(新星2002。1,715mm説もあり) | |
2,285mm(拡大型/新星2002A) | |
エンジン | イヴェコ SOFIM 8142.43型 直列4気筒 水冷ディーゼル |
(116hp/134hpのエンジンに換装可能) | |
最高速度 | 100km/h(路上) |
航続距離 | 850km(燃料124L搭載) |
渡河深度 | 0.75m |
武装 | 12.7mm機関砲×1(850発)、もしくは35mm擲弾発射機か23mmチェーンガン×1 |
9連装38mm催涙弾発射機(50発) | |
射撃ポート×5 | |
装甲 | 5mm~10mm |
最大搭載量 | 1,500kg |
乗員 | 2+7名 |
新星2002装輪装甲車(中国語では装甲防暴車/装甲(運兵)輸送車)は、陝西宝鶏専用汽車有限公司が開発した4×4型の軽装甲車/対テロ用防護車である。開発の動機は、同社の王宝和社長が9.11同時多発テロの勃発を受けて、国内外での対テロ作戦の拡大と対テロ作戦に必要とされる軽装甲車両の需要が発生すると予測したことであった。これは中国の兵器としては珍しい、メーカーによる兵器の自主開発の事例である。その存在が公にされたのは、2002年6月の中国国際警察装備展の会場であった。現在中国の公安(警察)や武装警察に採用されたほか、中国軍のPKO部隊の車両としてハイチやレバノンへの海外派遣も行われている。2005年10月中国軍に制式採用され、防弾ガラス製の操縦席タイプがZFB-05、操縦席を開閉式のハッチにしたタイプがZFB-05Aと命名された。
新星2002の初期型は中国製防弾鋼板を採用していた。しかし、加工上の問題が生じたため、スウェーデンのサーブ社の高張力防弾鋼板に換装、車体各部を大型鋼板からプレス加工で成形後に溶接する方式を採用した改良型が2004年に発表された。鋼板、製造方式の変更によって車体形状は洗練され、防御能力も大幅に向上した。車体各部は避弾経始を意識した傾斜面で構成され、車体底部は地雷対策用にV字型に成形されている。車輪も防弾、防爆仕様になっており一定の対弾性能を有する。新星2002の操縦席は、前方をガラスにしたタイプ(ZFB-05/新星2002)と、開閉式ハッチ(ペリスコープ3基付き)にしたペリスコープ型(ZFB-05A/新星2002A)が存在する。ペリスコープ型は、通常時はハッチを上げて走行する。ハッチが昇降すると、ハッチ下部にある防弾ガラス窓がスライドして操縦席を保護する様になっている。高脅威下の状況では、ハッチを閉じてペリスコープ越しに操縦を行う。前方のガラスや車体側/後部の視察窓には、車体の防弾鋼板と同等の防御能力を有する防弾ガラスが使用されている。新星2002の防弾鋼板は、100m、全方位からの56式・81式軽機関銃の7.62mm小銃弾による射撃、車体底部での58式対人地雷・58式対戦車地雷・5kgのTNT火薬の爆発、155mm榴弾砲の砲弾の断片に対する防御能力を有している。81式機関銃による射撃試験の際には、王宝和社長自ら車内に乗車して機関銃の射撃を受けて安全性をアピールするパフォーマンスを行った。また車体前面には衝撃吸収装置があり、時速40kmで小型自動車に衝突しても損傷せず、レンガ造りの壁を体当たりで破壊することもできる。ただし、中国PKO部隊がハイチに派遣された際、銃撃戦で小口径弾(5.56~7.62mm弾か?)が新星2002の装甲を貫通したケースが報告されている。
車内配置は、最前部にエンジンと変速機が配置され、その後方が操縦席で、操縦手が左側、車長が右側に位置する、車体後部は完全武装の兵員7名を搭乗させることが可能。乗降は車体側面の乗降口か車体後部の大型ハッチから行うほか、車体上部のハッチからの乗降も可能。軍用車両には珍しいエアコンを装備しているのもこの車両の特徴であり、搭乗員の体力の消耗に配慮した設計になっている。車両前面には3.8tのウインチが装備されており他車の牽引、スタック時の自力脱出用に使用することが可能。新星2002の原型では、イタリアのイヴェコと南京汽車工場の合弁企業である南京イヴェコ社製のNJ2045 4輪駆動車のシャーシが使用されていたが、量産型ではNJ2046 4輪駆動車のシャーシに変更された。NJ2046はイタリア軍で広く運用されておりピューマ装輪装甲車、MAV5装甲輸送車のシャーシとしても使用されている。信頼性が高く民生用としても広く使用されているイヴェコ社のシャーシを採用したことで、開発費用節約、運用コスト低減、海外での運用の際にもイヴェコ社の修理ネットワークを利用できるなどの利点が生じた。一両当たりの価格は96万元(約1400万円)であり、外国の同規模の車両と比べても低価格であるとしている。車体重量は4.8tであり、Y-8輸送機(運輸8/An-12)で一度に3両を空輸可能。空中投下運用も可能であると推測されており、同じシャーシを使用しているイタリアのピューマ装輪装甲車のように空挺部隊の装甲車として運用される可能性もある。車体上部のキューポラには12.7mm機関砲×1(有効射程1500m)が装備されており、任務に応じて9連装38mm催涙弾発射機も装備可能。9連装38mm催涙弾発射機は単射、3連射、9連射の射撃モードを選択でき、射程は150~200m、半径100m圏内を催涙ガスで覆うことが可能。12.7mm機関砲に換えて23mmチェーンガンや35mm擲弾発射機を装備することも可能。HJ-8対戦車ミサイル(紅箭8)、HJ-9対戦車ミサイル(紅箭9)などの対戦車ミサイル発射機を装備することも出来る(車内搭載ミサイルは10発)。このほか、射撃ポートが車体側面に各3基、車体後部に1基配置されている。射撃ポートからは小銃、短機関銃のほか催涙弾、発煙弾などのデモ鎮圧用の非殺傷兵器も発射可能。車体後部に3連装発煙弾発射機2基を装備した車両も確認されている。
新星2002には、陝西烽火通信集団公司が開発した車載通信システムが搭載されており、モトローラ25W350車載超短波通信装置を搭載、8m(12m/20mのものに換装可能)のアンテナを使用して最大2500km離れての通信が可能。搭乗歩兵が下車した際にも受信機を使用した相互連絡が可能であり通話は暗号化され機密性を向上している。またGPS位置測定機能を装備している。ネットワーク化への対応を重視しているのも特徴で、車内にはP4ノートパソコンが設置されネットワークの情報端末になる。また後部確認用の液晶ディスプレイが装備されており、車両後部の状況を逐一確認できる。その他、任務に応じて赤色灯、拡声器、照明灯などを装備可能。
新星2002は公安や武装警察での治安任務、対テロ作戦での運用のほか、軍における各種任務にも適合しており、コマンドポスト、装甲救急車、通信車両、対戦車ミサイルを搭載した戦車駆逐車等の運用が想定されている。開発メーカーの陝西宝鶏専用汽車有限公司では新星2002をベースにした8~10トン級の装輪装甲車の開発も計画している。新星2002は2004年には50両が生産され、総生産量は100両以上になっており、今後も更なる生産が行われるものと思われる。
2008年4月段階で、中国の10省の公安や武装警察で新星2002が運用されており、ハイチやレバノンに派遣された中国PKO部隊の装備としても運用された。また輸出も積極的に行われており、バングラデシュ(12両)、ニジェール、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、チャドなど合計8カ国に輸出され、コンゴ民主共和国で活動中の国連PKO部隊の装備(36両)としても採用されるなど国際市場で一定の成功を収めている。
開発名称 | 制式名称 | 詳細 |
新星2002(初期型) | 最初の生産タイプ。防弾鋼板は中国製、NJ2045 4輪駆動車のシャーシを使用 | |
新星2002(改良型) | ZFB-05 | 2004年に登場した改良型。シャーシをNJ2046に変更。防弾鋼板をスウェーデン製に換装、製造方式も変更して防御力を強化した。以後の車両はこのシャーシと製造方式を受け継ぐ |
新星2002(拡大型) | 搭載能力を向上させるために車体を拡大したタイプ。主に治安任務で使用 | |
新星2002A | ZFB-05A | 防御強化型。車体前面の窓ガラスをペリスコープ付き昇降式キューポラに換装したタイプ。 |
通信偵察車 | 基本型の通信能力を向上したタイプ。プランのみ | |
戦車駆逐車 | 対戦車ミサイル装備。プランのみ | |
装甲救急車 | ||
治安維持車型 | 武装警察で運用される車両。車体容積を拡大、放水銃や発煙弾発射機、サイレンなど治安任務に必要な装備を搭載。 | |
05F-2式治安維持車型 | ZFB-05F-2 | 2008年に公開された治安維持機関向け車輌[7]。 |
対空ミサイル搭載型 | TD-2000B | ZFB-05の車体後部にFN-16携行SAM四連装発射機二基を搭載した車両。自走対空砲やレーダー車両と合わせて運用される。TD-2000Bはシステム全体の名称で、車両自体の名称は「MA-4/8導弾(ミサイル)発射車」。 |
08式装輪装甲車 | ZFB-08 | 05式の拡大改良型。シャーシを延長し足回りを6×6式に変更。輸出向けに開発された |
【参考資料】
[1]兵工科技 2006年7月号「"中国虎"&"悍将"-訪陝西宝鶏専用汽車有限公司総経理王宝和」(兵工科技雑誌社)
[2]揚中市人民武装部「揚中国防教育網」
[3]中華網「願中国空降兵所(ling4)一款新戦装備早日列装」
[4]新浪軍事/新浪網「中国新式軽型装甲輸送車防暴車性能掲秘」
[5] 「記為国際維和部隊生産防暴装甲車的民営企業家」
[6] 「国産05A装甲車亮相装備展、已有8家外国用雇装備」(2008年04月16日)
[7]吉隆坡安全評論「中国陝西西宝鶏展示新型装甲駆散車」
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