■性能緒元
重量 | 40トン台 |
全長 | |
全幅 | |
全高 | |
エンジン | 8V150型水冷ターボチャージド・ディーゼル(800馬力) |
最高速度 | 50km/h以上 |
航続距離 | |
武装 | 52口径、もしくは54口径155mm榴弾砲×1(30発) |
12.7mm重機関銃×1 | |
4連装発煙弾発射機×2 | |
装甲 | |
乗員 | 5名 |
2005年の北京国際航空博覧会で展示された模型によってその存在が明らかにされた中国最新の155mm自走榴弾砲。2007年から中国軍への配備が開始された。
中国軍では長らくソ連系の152mm榴弾砲を大口径野戦砲として運用してきたが、西側から長射程の45口径155mm牽引式榴弾砲の技術導入が出来る目処が立ったことから、1982年に次世代の自走砲には155mm砲を採用することを決定した[4]。
先ずは、牽引式のPLL-01 155mm榴弾砲(WA-021)が開発され、それに続いて輸出向けにPLZ-45 155mm自走榴弾砲が実用化された。ただし、これらが実用化した1990年代には冷戦の終結とソ連の崩壊に伴って極東ソ連軍の脅威が消滅したことを受けて地上軍向け装備の開発優先度が下がったこともあって中国軍向けには限定装備に留まった。
PLL-01やPLZ-45は、従来の中国軍の砲体系とは異なる口径を採用しただけでなく、各種装備や戦闘システムも西側砲兵に即したものを採用している。中国軍にとっては、PLL-01やPLZ-45で砲兵部隊の更新を行う場合、旧式化した砲兵システムを全面的に改める必要が生じることとなり、そのためには巨額の新規投資と人員の再訓練が必要となる。さらに、155mm砲弾を採用するとなると、これまで大量に生産してきた152mm砲弾のストックが無駄になることも懸念材料であった。1990年代以降、空軍・海軍の装備調達が優先される状況においては、このような巨額の費用を必要とする装備調達は行い得ないのが現実であり、PLL-01やPLZ-45の配備は限定的なものに留めざるを得なかった。
その一方で、各国で開発が進んでいる新型自走砲に伍する中国軍向け自走砲の開発は継続されることとなった。新型自走砲の開発に着手したのは1990年。当時、輸出向けに開発中であった PLZ-45を技術的基盤として、世界水準の新型自走砲を実用化することが目指された[4]。開発においては、大威力、長射程、ネットワーク化への対応、そして自動装填装置の採用が重要課題として提示された。自動装填装置の開発は最も困難な課題であり、研究チームはロシアの2S19「ムスタ」152mm自走砲の自動装填システムを調査分析して、最終的に155mm砲弾と分離装薬および自動装填装置に関する課題を解決している[4]。試作車の完成は2003年[2]、2005年には「PLZ-05式155毫米自行加榴砲」として制式化に漕ぎ着けた。(加榴砲とはCannon Howitzerの訳)。
【性能】
PLZ-05のシャーシは「第二世代履帯式共通シャーシ(第二代履帯式通用底盤)」と呼ばれる各種自走砲の共通プラットフォームとして開発されたものを使用している[7]。このシャーシはPLZ-45でも採用されているが、PLZ-05では装備重量の増加に対処するためシャーシ各部に設計変更を加えている。足回りには油気圧サスペンションが導入され、良好な機動性能を発揮するとのこと。車体が大型化して重量も40トン台になったことにより、砲の反動を十分吸収できるようになったため、PLZ-45では装備されていた車体後部の駐鋤が廃止された。駐鋤が廃止されたことにより、停車から射撃までの時間が短縮でき、射撃後に迅速に移動を行うことが可能となった。車体前方右部には800馬力の8V150型水冷式ターボチャージド・ディーゼルエンジンを搭載[4]。エンジンと変速装置はパワーパック化されており、整備の際には迅速な換装が可能。車体後部には砲塔が搭載されており、操縦手以外の乗員4名が搭乗している。車体後部には補助動力装置が搭載されており、停車時の砲塔駆動や電子装備の使用に必要な電源供給源となっている[4]。ただし、補助動力装置によって車内に搭載できる砲弾数が圧迫されることになっており、車内には5発の砲弾+装薬しか搭載できず、殆どの砲弾は砲塔バスルにある自動装填装置に搭載されている。
【砲システム】
PlZ-05の155mm砲は、PLZ-45の45口径155mm砲よりも砲身が延長されており、52口径もしくは54口径砲が採用されていると見られている[2]。使用可能な砲弾としては、NORINCOが開発したHE(榴弾)、FRFB-HE、FRFB-BB-HE、FRFB-BB-WP(白燐弾)、FRFB-illuminating(照明弾)、FRFB-smoke(発煙弾)、子爆弾搭載型(FRFBとFRFB-BB型が有る)、レーザー誘導砲弾、FRFB-BB-RAP(Rocket Assisted Projectiles:ロケット補助推進弾)などが用意されている。この内、FRFB-BB-RAP弾を最大装薬で発射した場合の最大射程は50kmを超えるものと思われる。また、中国は1900年代にロシアから「クラスノポール」レーザー誘導砲弾の技術導入を受けており、これを元にしてGP-1 155mmレーザー誘導砲弾を実用化している。GP-1は、中間誘導は慣性航法式で終末誘導には前線観測員によるレーザー照射を利用したセミアクティブ・レーザー誘導方式を採用しており、最大20kmまでの目標に対する攻撃が可能[5]。
前述の通り、PLZ-05には自動装填システムが採用され、発射速度は持続射撃で毎分3~4発、短時間での最大発射速度は8~10発/分に達するとされる。自動装填装置は砲塔バスルに搭載されており、合計25発の砲弾+装薬を装填している(車内の予備弾薬庫と合計して30発分の砲弾と装薬を搭載)。PLZ-05の自動装填装置はサイズや重量の割に装填弾薬が少なく、駆動系統の多くに被弾時の燃焼の危険のある油気圧式を採用している事が問題視されている[4]。(PLZ-05の自動装填装置開発の参考となったロシアの2S19は砲塔内の自動装填装置に50発搭載[6]。)この他に、装薬の構造上の問題から装薬充填量を変更するのが不便なため、数種類の異なる装薬量の装薬を自動装填装置に収めておく事で対処しているが、これは実際の使用では柔軟性を欠く方法だと指摘されている[4]。砲弾の管理はコンピュータにより自動化されており、砲手は装填されている砲弾の種類や残存弾数を直ちに確認することが出来る。
PLZ-05の射撃統制システムは大幅に自動化が進み、高度に電子化された射撃統制装置が採用されており、ネットワーク技術も積極的に取り入れられている。ネットワーク技術の積極的な導入は同時期に開発された07式122mm自走榴弾砲(PLZ-07)や05式120mm装輪自走迫撃砲(PLL-05)とも共通している。
PLZ-05の射撃統制システムは、弾道計算機、衛星航法装置(GPS/「北斗」両システムの使用が可能)、自動照準システム、砲口測定器、弾薬温度探知機、砲身温度探知機、車体振動感知器等から構成されている。情報処理速度はPLZ-45の倍のスピードを達成している[4]。ネットワーク機能としては、データリンク機能により連隊・大隊射撃指揮車両からの指揮管制により一元的な統制射撃を実施したり、UAV等から得られたデータを即座に射撃に反映させることが出来るようになった。
PLZ-05は大隊級射撃・指揮自動化システムが中国の自走砲として始めて導入している。同システムを使用することで、自走砲大/中隊は、陣地展開、各自走砲の照準、修正、大/中隊による一斉射撃までの過程を30秒で行うことが可能となっている[4]。また、俯仰角を変更しつつ連続射撃を行うことで、一門の砲から発射した複数の砲弾を同時に目標に着弾させる能力も獲得している[4]。移動中に敵情報を得た場合は、各自走砲に目標情報を転送し、それを元に各自走砲が独自に照準・射撃を行う事もある[4]。
【配備状況・派生型】
PLZ-05は2007年に瀋陽軍区の第39集団軍所属の砲兵旅団への装備が開始され、2010年7月までに下記の部隊に配備が行われている[3]。
軍区 | 所属部隊 |
瀋陽軍区 | 第38集団軍 砲兵旅 |
瀋陽軍区 | 第39集団軍 砲兵旅 |
北京軍区 | 第14砲兵旅 |
南京軍区 | 第1集団軍第9砲兵師 |
広州軍区 | 第41集団軍第1砲兵師 |
PLZ-05の派生型としては、同一のシャーシを使用した弾薬運搬車が実用化されている。
▼弾薬補給中のPLZ-05(右)。左側は弾薬運搬車。
【参考資料】
[1]暁煒/劉瓊「従牽引到自行-中国155毫米火炮発展之路」(『兵工科技』2007年9月号/兵工科技雑誌社)
[2]Chinese Defence Today「PLZ05 155mm Self-Propelled Howitzer」
[3]China Defense Blog「A new PLZ04 155mm Self Propelled Howitzer unit commissioned.」(2010年7月19日)
[4]霍健鹏「详解国产PLZ-05榴弹炮:自动装弹系统尚需改进」(原『现代兵器增刊』所載。2009年10月30日に新浪網に転載)
[5]Chinese Defence Today「GP1 152/155mm Laser-Guided Projectile」
[6]戦車研究室「2S19ムスタS 152mm自走榴弾砲」
[7]中国武器大全「中国新型双35毫米自行高射炮」
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