2015年1月6日火曜日

87式100mm装輪自走対戦車砲(PTL-87)






87式100mm自走対戦車砲(PTL-87)は、中国が始めて開発した装輪式自走対戦車砲(中国語では装輪式突撃砲)である。開発元は中国北方工業公司(NORINCO)。

中国の自走対戦車砲の研究開発は1980年代中ごろに開始され、1987年には最初の対戦車自走砲であるPTL-87が公開された。PTL-87は、当時開発されたばかりの90式装輪装甲車(WZ-551)の車体後部に溶接砲塔を搭載して開発された。車体の構成はほとんど変わっていないが、後部兵員室は100mm滑腔砲用の弾薬庫と戦闘室になっている。車体後部にある砲塔は88式戦車(ZTZ-88)の砲塔を元に設計されており、砲塔内には車長、砲手、装填手が配置される。レーザー照準装置や暗視装置、射撃統制システムも88式戦車のものを流用しているが、車体が軽量で砲発射時の衝撃を十分吸収できず車体が振動するため命中精度では88式戦車に劣る。行進間射撃も可能だが、射撃の反動で横転の危険があるため砲塔の旋回角度は制限される(停車時であれば全周射撃が可能)。この砲塔に装備されている100mm滑腔砲は86式100mm対戦車砲をベースに開発された低反動タイプで、APFSDS弾、HEAT弾、HE弾を発射することが出来る。補助武装としては、車長用キューポラに対地・対空用の12.7mm機関砲が、主砲同軸機銃として7.62mm機関銃が搭載されている。そのほか砲塔側面に84式76.2mm発煙弾発射機が8基搭載されている。

PTL-87に対する軍の評価はあまり高いものではなかった。90式装輪装甲車(WZ-551)にほぼ無改造に大重量の砲塔を搭載した事で、原型に比べて機動力が低下、防御能力の不足(全周からの7.62mm機関砲に抗堪)も問題となった。最も大きな問題となったのは、100mm滑腔砲の貫通力不足である。PTL-87の100mm滑腔砲ではAPFSDS弾を使用しても、第三世代戦車の複合装甲や爆発反応装甲に対して充分な貫通力を持たない可能性が指摘された。これは、車載化に伴う低反動化等の改修が貫通力の低下を招いたものと推測される。このほか、車高の高い装輪装甲車を原型にしたことで、車高が必要以上に高くなり被発見率が上昇したことも問題視された。これらの技術的問題を受けて、PTL-87の本格生産は見送られ少数が生産され試験的に配備されるに留まった。ただし100mm対戦車自走砲の開発が中断されたわけではなく、NORINCOには引き続き研究を続行し各種問題点の解消と技術的熟成に務めることが指示された。


【参考資料】
新浪網「中国陸軍列装新型100毫米輪式突撃砲(組図)」
Chinese Defence Today
中国武器大全

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