2015年1月6日火曜日

09式装輪105mm突撃車(装輪坦克/ZTL-09)






■性能緒元
重量 20トン台後半?
車体長
全幅
車体高
エンジン
最高速度
航続距離
武装 105mmライフル砲×1
  12.7mm重機関銃×1
  7.62mm機関銃×1
  砲発射型対戦車ミサイル
  84式76.2mm発煙弾発射機×12
装甲 圧延溶接鋼板+付加装甲
乗員 4名(車長、操縦手、砲手、装填手)


ZTL-09は、09式装輪歩兵戦闘車「雪豹」(ZBL-09)の派生型として開発が行われた装甲戦闘車輌の1つ。配備が開始されたばかりのZTL-09に関する情報は(ZTL-09という制式名自体の真偽も含めて)まだ十分ではなく、本稿の記述も推測が多くなっている。

インターネット上では、ZTL-09の車輌名称として「09式8X8輪式105mm突撃車」[1]、「某新型輪式坦克」[2]、「輪式突撃車」[3]などが伝わっているが、ZTL-09の制式名称が正しければ「Z=装甲、T=(車輌のジャンルの頭文字を表す)、L=輪式」となり、上記名称の突撃車(tūjīchē)/坦克(tǎnkè)はいずれも頭文字がTで、どちらの名称にも妥当性が存在する。

似た様な性格のAFVとしては02式100mm装輪突撃砲(PTL-02)が存在するが、同車の制式名称PTL-02のPとは「炮pào=砲」を意味しており、砲兵科の車輌である事を表している。これに対してZTL-09はPではなく装甲(zhuāngjiǎ)を表すZが付いている事から、PTL-02とは異なり装甲兵科に配備される車輌である事が分かる。

【性能】
ZTL-09は09式装輪歩兵戦闘車(ZBL-09)の派生型だが、シャーシには大幅な設計変更が加えられている。最も大きい変化はフロントエンジンからリアエンジンへの変更で、車体前方右部に配置されていたパワーパックを、車体後部に配置変更している。それに伴って車体後部ドアを廃止、代わりに車体中央右側に前開き式ドアを設けている[3]。エンジン配置の変更は、砲塔を車体中央部に配置する事で射撃プラットフォームとしての安定性改善を図ったものと考えられる。

操舵は第一、第二軸の車輪で行われる[4]。車体後部両側にはスクリューが装備されており、ZTL-09が水上航行性能を有する事を示している。装輪装甲車としては比較的大型の車体を採用しているのは、水上浮航性能を得るための措置と考えられる。鉄道輸送中の写真では、ZTL-09は同じ貨車に載せられていた96式戦車よりも車体長・車高サイズが大きい事が確認されている[1]。

車体は圧延鋼板装甲を溶接して製造されており、車体や砲塔には防御力を向上させるためセラミック付加装甲がボルト止めされているが、これはベースとなった09式装輪歩兵戦闘車と共通した手法。ZTL-09の具体的な防御性能については不明であるが、水上航行能力を有しているのでそれほど重量を重くする事は出来ないと考えられ、装甲防御能力については比較的軽いものに留められていると推測される。

ZTL-09の砲塔形状は05式水陸両用戦車(05式両棲突撃車/ZTD-05)と似ており、同車の砲塔を基にして設計された事が想定される。砲塔の前・側面にはセラミック付加装甲が装着されており、砲塔後部にはHEAT弾対策を兼ねた籠型ラックが取り付けられている。砲塔正面には合計12基の発煙弾発射機が装着されており、必要に応じて煙幕を展開して車体を隠す様になっている。

乗員は車長、砲手、装填手、操縦手の4名で構成され、操縦手が車体前方左側の操縦手席、残り三名は砲塔内に搭乗する。操縦系統は通常の自動車と同じハンドル式で、変速機は自動変速方式が採用されている[4]。砲塔配置は、砲塔左部に砲手と車長、左部が装填手という配置になっている[4]。これは88式戦車(80-I式戦車/WZ-122A/ZTZ-88)までの中国軍戦車に共通した乗員配置であり、02式100mm装輪突撃砲や05式水陸両用戦車(05式両棲突撃車/ZTD-05)でも同じ配置を採用している。浮力確保のために車内容積を広く取っている事から車内は余裕があり、エアコンを装備するなど乗員の戦闘力保持のための措置が講じられている[3]。

【武装】
主兵装である105mmライフル砲は、反動低減のため砲身先端に多孔式マズルブレーキを装着しており、駐退複座機の改良と合わせて後座長を延ばす事で砲の反動を抑えているものと思われる。105mmライフル砲の使用弾種には、APFSDS(装弾筒付徹甲弾)、HE(高性能榴弾)、HEAT(対戦車榴弾)、GP-2砲発射式対戦車ミサイルなどが存在しており[7]、ZTL-09もこれらの砲弾を搭載すると考えられる(APFSDS、HEAT、榴弾については搭載を確認[4])。砲弾は、砲塔後部バスルと操縦手席右側にある砲弾ラックに搭載される[4]。砲弾の搬入には車体側面ハッチが使用される[4]。副武装としては、主砲同軸に7.62mm機関銃1挺、砲塔上部の装填手用ハッチに12.7mm重機関銃1挺が搭載されている。

ZTL-09の射撃統制装置についてはまだ詳細な情報は無いが、主力戦車並みの高度なものが採用されていると考えられる。同車の射撃統制装置は、大半の入力がボタン式になっており、必要な諸元を入力すれば直ちに射撃準備が整うとされ、高い命中精度を実現しつつ操作性が容易で習熟しやすいシステムとなっている[2]。

ZTL-09は近年の中国軍AFVと同様にネットワーク化を重視した設計が施されており、戦場情報システム、データリンク機能、衛星位置測定システムなどを標準装備している[2]。砲塔上部には、衛星通信用のアンテナが搭載されており、「北斗衛星位置測定システム」を利用して車輌の現在位置を確認する事が可能。各車輌の目標諸元は、データリンク機能を利用して車内各員、車輌と車輌の間、車輌とコマンドポスト、上級部隊の間で共有される[2]。ただし、戦術データリンク、情報共有システム、液晶デジタル情報表示パネルの操作、「北斗」衛星位置測定システムといった多用な情報機器を使いこなすには、情報化に対応した乗員の訓練が必要になる事が報じられている[2]。

【配備状況】
ZTL-09は、北京軍区の第38集団軍所属の第112重機械化歩兵師(師団に相当)と済南軍区の第54集団軍所属の第162軽機械化歩兵師への配備が行われている[1][5]。

第162軽機械化歩兵師は、近年中国軍で編制が進んでいる軽機械化歩兵部隊の1つ。軽機械化歩兵部隊は、装輪車輌を主装備とする部隊で、高い展開能力を生かして迅速に戦場に投入する事が想定されている[6]。09式装輪歩兵戦闘車(ZBL-09)は軽機械化歩兵部隊の新しい主力装甲戦闘車輌として位置づけられており、軽機械化歩兵部隊向けにZBL-09をベースとした各種派生型が開発されており、ZTL-09もその1つ。同系列の車輌で部隊を編制する事は、乗員や整備員の訓練や習熟を容易にし、各車輌が多くのコンポーネントを共有している事から整備面で有利に働く[6]。

ZTL-09は、装輪車輌としての高い戦略機動性を生かして緊急展開を行い、ファミリー車輌であるZBL-09歩兵戦闘車、122mm自走榴弾砲PLL-09などと共同作戦を取る事で、部隊としての総合的な打撃力を向上させる事が目されていると思われる。ZTL-09は、105mm砲により、敵陣地の破壊、戦車を含む装甲戦闘車輌との交戦、直接射撃と間接射撃による火力支援、機動力を生かした輸送車輌部隊の護衛任務などに従事するものと考えられる。ただし、装輪車輌であり装甲も限られている事から、戦車のような運用は行われず、基本的に火力支援兵器として使われる車輌であるといえる。


▼トランスポーターで輸送中のZTL-09試作車


▼済南軍区の部隊に配備されたZTL-09

▼同一縮尺のZTL-09と96A式戦車



【参考資料】
[1]ych2000「網上談兵:国産新式8X8輪式105突撃車組図」(文学城博客-胡写龍談/2013年4月19日)
[2]軍事記者「用新头脑驾驭新装备 济南军区某装甲团新装备列装带来的冲击波」(王衛東・武今鹏/2013年4月12日)
[3]CNTV「誰是終極英雄」(2013年10月13日放送)
[4]CNTV「誰是終極英雄」(2013年10月20日放送)
[5]China Defense Blog「The first ZBL-09 Assault gun equipped unit unveiled」(2013年4月13日)
[6]竹田純一『人民解放軍 党と国家戦略を支える230万人の実力』(ビジネス社/2008年)273~277ページ

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