2014年11月3日月曜日

86式歩兵戦闘車(WZ-501/BMP-1)

▼86式歩兵戦闘車(ZBD-86/WZ-501)


▼海軍陸戦隊に配備された86式歩兵戦闘車。


▼海軍陸戦隊向けに洋上航行性能を向上させた86B式歩兵戦闘車(ZBD-86B)

▼86G式歩兵戦闘車。GCTWM砲塔を搭載した近代化改修型


性能緒元(86式歩兵戦闘車)
重量13.3トン
全長6.74m
全幅2.97m
全高1.92m
エンジン6V150 水冷ディーゼル 300hp
最高速度65km/h
浮航速度8km/h
航続距離510km
武装2A28 73mm低圧砲×1(40発)
 HJ-73対戦車ミサイル(紅箭73)発射機×1(5発)
 7.62mm機関銃×1(2000発)
装甲26mm(砲塔前面)
乗員3名(車長、操縦手、砲手)+8名

86式歩兵戦闘車(ZBD-86/WZ-501)は旧ソ連製BMP-1の中国製コピーである。世界に先駆けた歩兵戦闘車BMP-1の開発は1964年からソ連のチェリャビンスク・トラクター工場で行われた。1966年に制式採用され、その後幾つかのマイナーチェンジを受けつつ1983年まで生産が行われ、東側を代表する歩兵戦闘車の地位を占めた。

中国は1980年代に中東諸国から数輌のBMP-1を極秘に入手した。これをコピー生産の為に利用する計画は1986年に完了し、1987年からNORINCOで生産が開始されて中国陸軍への配備が行われた。86式IFVはこれまでに約1000両が生産されたと推測されている[2]。86式は中国最良の歩兵戦闘車だが、原型となったBMP-1は1973年の第四次中東戦争や1980年代のアフガニスタン戦争、1991年の湾岸戦争などで攻撃力や防禦性能、居住性などに多くの問題を抱えている事が判明している。これをうけて中国は次世代の歩兵戦闘車?を開発しており、既存の86式IFVには新型のGCTWM砲塔(30mm機関砲とHJ-73対戦車ミサイルを装備、第二世代の微光増幅式暗視装置を搭載[6])に換装する近代化改装を施して能力向上を図っている。

86式IFV(BMP-1)は比較的大型の船型車体を持ち、その前部右側に6V150ディーゼル・エンジン(このエンジンはオリジナルのBMP-1が搭載するUTD-20より出力が大きい)が搭載されている。その左側に操縦手席があり、操縦装置が配置されている。この操縦装置はバイク型のハンドルになっており、油圧でバックアップされて操作は極めて容易である。履帯はゴムブッシュ付のダブルピン結合式で、履帯寿命を延ばすと共に効率的な動力伝達を実現している。操縦席の後方には旋回式キューポラを持つ車長席が設けられている。この車長席はペリスコープ3個と固有の赤外線サーチライトを持っているが、砲塔が右後方にあるため360度全周の視界は確保されていない。

車長席後方には1人用の砲塔がある。砲塔の旋回と73mm低圧砲、同軸の7.62mm機関銃の俯仰は電動・手動併用だ。73mm低圧砲の装填は自動式で、砲塔バスケットには砲弾40発入り(HEAT弾20発、HE弾20発)のマガジンが配置されている。また7.62mm機関銃の弾薬もひとつの給弾ベルトにリンクされて弾薬ボックスに収められている。73mm低圧砲は対戦車擲弾発射機のようなもので、その発射原理はRPG-7対戦車無反動砲とほぼ同じである。HEAT擲弾の後部に付いている発射薬で撃ち出し、直後に4枚の安定翼が展開、擲弾底部のロケットモーターが点火され700m/sまで加速し目標に向かう。HEAT弾の最大射程は約1,300m。この73mm砲は俯角がほとんど取れないので、自車より低い位置にいる目標には砲を照準する事が出来ない。また砲塔がスタビライザーで安定化されていないため、走行中に発射する事もほぼ不可能だ。主砲上にはHJ-73対戦車ミサイル(紅箭73)の発射レールが装備されている。この対戦車ミサイルは停止中でないと発射する事ができない。再装填は、防盾後方に設けられている再装填用ハッチから行い、車外に出ることなく約1分でミサイルの再装填を行うことが可能。車体固有の装備のほかに、搭乗歩兵用の武器として40㎜対戦車ロケット×1、手榴弾10発を搭載している。このほか、必要に応じてHN-5携帯対空ミサイル(紅纓5/HY-5/9K32ストレラ2)を搭載するスペースを有している。

砲塔より後の兵員室は中央を燃料タンクとバッテリーボックスで仕切られ、その左右両側に各4名分ずつの歩兵席が設けられている。各席には固有のペリスコープと射撃ポートが装備されている。左右の一番前の席の射撃ポートは7.62mm機関銃用になっており、分隊支援機関銃を使用して弾幕を張ることができる。86式(の元になったBMP-1は)は核戦争下での乗車戦闘を前提に開発されたのでNBC防護装置も搭載しており、自動消化装置、煙幕展開装置も装備されている。車体は溶接防弾鋼板で構成されているが、装甲板は極めて薄い。そのため車体右側のエンジンルームや後部の燃料タンクは簡単に発火する。また車高が2mと低いので兵員室が異常に狭く、乗車している歩兵は這うようにして後部ハッチまで進まないと下車できない。車体は水密構造だがウォータージェットは装備されておらず、履帯を回転させる事で浮航する。これは主に内陸の渡河作戦を前提にしたもので、洋上での水上航行は困難である。そのため、海軍陸戦隊向けに水上航行性能を向上させた86B式IFVが開発されている。86B式では、車体後部に取り付けた船外機によって推進力を得る方式が採用されており、水上浮航速度を向上させている。洋上航行に備えて車体の前後には浮力確保のため着脱式のフロートが装着され、波除け用のトリムベーン拡大などの改造が施されている[6]。海軍陸戦隊には86式と86B式の双方が配備されているが、未改修の86式も船体後部に航行性改善のため船外機を取り付けている事例が確認されている。

86式IFVは第38軍集団の機械化歩兵師団など主に北方の陸軍部隊に集中配備されているが、例外的に水上航行性能を強化した86B式IFVが中国南部の広東省の部隊で運用されている。また、86式IFVは、イラン、イラク、ミャンマー、スリランカへの輸出に成功している[2]。

86式歩兵戦闘車ZBD-86WZ-501BMP-1のコピー。基本型。
86B式歩兵戦闘車ZBD-86B海軍陸戦隊向けに開発された86式の水上航行性改善型。車体後部に船外機を装着、車体の前後に浮力確保のためフロートを装着、トリムベーンの大型化などの改良が行われている。
 WZ-503砲塔を外して12.7mm重機関銃を装備した装甲兵員輸送車型。
 WZ-504HJ73B対戦車ミサイルの4連装発射機を装備した戦車駆逐型。試作のみ。
  WZ-504とは異なる形式の戦車駆逐車。こちらも試作のみ。
 WZ-50525mm機関砲と同軸7.62mm機銃を装備した1人用砲塔搭載型。
86G式歩兵戦闘車ZBD-86G  30mm機関砲とHJ-73対戦車ミサイルを搭載した新型砲塔(GCTWM)テスト車。その後量産化され既存の車両もGCTWM砲塔に換装している。車体重量は14.8tに増加。車体後部には86B式と同じく外装式の船外機を搭載することが可能で、水上速力は12km/h。
 NFV-11980年代にアメリカと共同開発した25mm機関砲搭載型。試作のみ。
NBC偵察車 86式IFVベースのNBC偵察車。
装甲観測車  86式IFVベースの装甲観測車型。

【参考資料】
[1]戦車名鑑-現用編-(後藤仁、伊吹竜太郎、真出好一/株式会社コーエー)
[2]Chinese Defence Today「Type 86 Infantry Fighting Vehicle」
[3]戦車研究室
[4]坦克與装甲車両
[5]新浪網 「中国昇級WZ-501歩兵戦車、換装弾炮合一砲塔」
[6]MDC軍武狂人夢「86式裝甲歩兵戦闘車」

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