▼2009年に撮影された新型装軌式122mm40連装自走ロケット砲の試作車両
▼北京軍区の部隊に配備された新型装軌式122mm40連装自走ロケット砲
新型装軌式122mm40連装自走ロケット砲は、89式122mm40連装自走ロケット砲(PHZ-89)の後継として開発されたと推測される中国最新の装軌式
自走多連装ロケット砲。
2009年頃から路上走行試験の様子が撮影され存在自体は知られていたが[1]、その時点ではこの車輌がどのような意図を持って開発されたのかは不明であった。2013年9月になって軍事・農業番組を取り扱うCCTV7の報道で、北京軍区の部隊での配備が行われているのが判明した[2]。同車に関する情報は乏しく、開発経緯や制式名称の有無などは明らかにされていない。
中国のインターネット上では「新型122毫米模块化自行火箭炮」(新型122mmモジュール化自走ロケット砲)と呼称されており、PHL-10/PHL-12などの制式名も挙がっているが真相は不明(PHLは「炮」「火箭」「履帯式」のそれぞれの中国語発音の頭文字に由来すると思われる)[3]。
【性能】
型式不明の装軌式シャーシの最前方に乗員が乗車する装甲キャブを配置、荷台後方に多連装ロケット砲一基を配置している。シャーシの形状や転輪の配置、履帯の形状などから、07式35mm自走高射機関砲(PGZ-07)のシャーシとの類似性が認められるので、同車のシャーシ設計を基礎にして開発された可能性が考えられる。
キャビンには2分割式前方視認窓が設置されており操縦手は良好な視野を得る事が出来る。操縦手用ハッチを開放するかペリスコープで外部視認しながら操縦していた89式122mm40連装自走ロケット砲に比べて操縦手の負担は少なくなったといえる。これは本車が後方からの火力支援任務が主で、最前線での運用を想定していないことを前提として、防弾性能よりも乗員の負担軽減を意図した設計方針を採っている事をうかがわせる。この種の自走ロケット砲の場合、ロケット弾の火炎避けに窓を覆う装甲カバーをつけている車輌も多いが、本車は、キャビンとロケット砲の距離が離れておりロケット炎の影響が少ないためか、ロケット発射の際にも視認窓はそのままで防炎カバーは装備されない。車体中央部左側にエンジンの排気口が存在するので、動力系統はキャブの後方に搭載されていると思われる。
荷台後方に搭載された122mmロケット砲は、20連装のランチチューブを一組としたコンテナ2基を搭載。再装填の際には、ランチャーにロケット弾を装填するのではなくコンテナ一式を換装する事で、多連装ロケット砲の問題点である装填時間の長さを解消しているものと考えられる。射撃統制システムなどに関する情報は明らかになっていないが、89式122mm40連装自走ロケット砲の制式化から20年を経て開発された車輌である事から、最新のシステムが盛り込まれており、同じ122mm多連装ロケット砲でもその戦闘能力は大きく向上していることが想定されている[4]。
【展望】
中国軍では、新型装軌式122mm40連装自走ロケット砲を89式122mm40連装自走ロケット砲の後継車輌として装甲師/旅(師団と旅団に相当)の自走ロケット砲大隊に配備するものと思われる。本車が採用された事で、中国軍では89式に代わる師/旅級多連装ロケットの口径についても122mmを維持する事が明らかになったと言える。
【参考資料】
[1]新浪網「解放军59小改的122火箭炮新图再流出」(2009年4月11日)
[2]新浪網「北京军区实战大演习最新型履带火箭炮威力强大」
[3]新華網「组图:中国新型模块化自行火箭炮亮相」(2013年10月4日)
[4]114軍事網「中国履带式模块化火箭炮是首次采用模块布局」(2013年10月3日)
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