2014年11月8日土曜日

70式122mm自走榴弾砲(WZ-302)

▼70式122mm自走榴弾砲(WZ-302)


▼渡河用フロートを展開したWZ-302(70-II式)


WZ-302性能緒元
重量15.4トン
全長5.654m
全幅3.06m
全高2.729m
エンジン空冷ディーゼル 260hp
最高速度56km/h
航続距離450km
武装54-I式122mm榴弾砲×1(40発)
 67式7.62mm機関銃×1(1,000発)
最大射程11.8km(榴弾)、15.3km(ERFB弾)
装甲溶接鋼板
乗員7名

70式自走榴弾砲は63式装甲兵員輸送車(後にベース車体を85式APCの原型と思われる63-I式に変更)の車体に、ソ連製のM1938(M30)122mm榴弾砲をコピーした54-I式122mm榴弾砲を搭載した自走砲であり、中国が開発配備した最初の自走榴弾砲となった。

54-I式122mm榴弾砲を63式APCに搭載した自走砲の開発は1969年に開始された。最初の試作車は1970年に完成した。1970年6月25日には設計案が承認され計画名称として70式122mm自走榴弾砲の名が与えられた。しかし翌71年、内モンゴルにおける総合演習に参加した70式の試作車は、足回りにトラブルを起こし満足に部隊に追随できなかった。これは、小型の63式APCの車体にそのまま122mm砲を搭載したことに起因するトラブルであった。これを解決するため、開発途中の1974年からは63式APCの改良型である63-I式APC(車体形状は63式を継承しているが、車体が延長され転輪も5つに増加。後の85式APCのベースの1つ)を新たに開発してベース車体にする変更が行われた。最終的に、1981年9月29日に装甲兵軍工産品定型委員会の承認を受けて1970式122mm自走榴弾砲として制式採用され、1984年に生産が開始された。開発に12年の歳月を要したのは、文化大革命の混乱が影響している。

70式の車内配置は、車体前部には原型の63式APCと同様左側に操縦手席と車長席、右側に機関室となっており、その後方のオープントップ部分に122mm榴弾砲を搭載している。砲前面には防盾が装備されているが、側面と後面はキャンパス製の覆いが展開できるだけで、砲手達は身を晒して作業を行わなければならない。この点を改善するために、側面と後面に高さ100mmの防弾鋼板を後付で装着することが可能。左右の射角は22.5゜、俯仰角は-2.5~-63゜。最大射程は榴弾で11.8km、ERFB弾で15.3km、携行弾数は40発となっている。内訳は車体底部の砲弾収納箱と装薬収納箱それぞれ二つに28発(の砲弾と装薬)、残りの12発分が車内各部に搭載される。70式の122mm榴弾砲は原型の54-I式122mm榴弾砲と基本的に同じだが、照準器に夜間暗視装置を装着して原型では不可能だった夜間戦闘が可能になっている点が異なる。122mm砲以外には護身用にソ連の7.62mm機関銃RP-46をコピー生産した67式7.62mm機関銃×1を車内に搭載している。

70式は63式APCより重量が2トン増加しており、63式が有していた水上浮行能力は実質的には失われていた。このため、70式に渡河用フロートを装着して水上浮行能力を付与する改良型の開発が行われた。この車両は通信機器等の改良を施した上で70-II式122mm自走榴弾砲として採用された。これに伴い、従来の70式は70-I式と呼ばれるようになった。

70式自走砲は、本格的な自走砲というよりは牽引砲を自走化した簡易自走砲という性格が強い車両である。これは当時の中国の厳しい開発状況(政治的混乱、財政難、技術的遅れなど)が背景に存在した。そのため性能が低いことは当初から織り込み済みであり、牽引式よりも要員を減らせることや機動性を向上できること、既存装備の流用で開発コストを減らし要員の習熟を容易にする等のメリットを取ったともいえる。また70式以外の自走ロケット砲やコマンドポスト車両等の砲兵科の車両を、いずれも63式系APCにすることによる相互運用性の向上も視野に入れていた。しかし、文革の混乱や技術水準の遅れから開発に手間取ったことで、上記の利点も薄れ、各国の自走砲との性能差も更に開いてしまった。

70式は一部の機甲師団や機械化歩兵師団に配備され、ソ連製SU-76やSU-100等の車両を代替した。しかし70式の能力不足や、1978年により長射程・大威力の自走砲の開発が決定された(後の83式152mm自走榴弾砲)ことから70式の配備は少数に留まった。70式は中国軍のみで運用され、輸出は行われていない。

【参考資料】
戦車名鑑-現用編-(後藤仁、伊吹竜太郎、真出好一/株式会社コーエー)
坦克装甲車両 2006年6月号「鉄甲戦神在怒吼(上)」(坦克装甲車両雑誌社)
Chinese Defence Today
戦車研究室
中国武器大全


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