2014年11月8日土曜日

09式122mm装輪自走榴弾砲(PLL-09)

▼09式122mm装輪自走榴弾砲(PLL-09)。車体各部や砲塔の格子状や十字・X字型の筋はZBL-09系統の他の派生型には無いPLL-09独特のもの。122mm砲の発射の衝撃に耐えるために鋼板にフレームを入れて車体構造を強化したことが考えられるが詳細は不明。


性能緒元
重量21t前後
車体長8m前後
全幅3m前後
全高3m前後
エンジンBF6M1015Cターボチャージド・水冷ディーゼル・エンジン(440hp)
最高速度100km/h
航続距離800km
武装96式122mm榴弾砲(PL-96)×1(40発)
 12.7mm重機関銃×1
装甲圧延鋼板装甲
乗員4~5名(車長、操縦手、砲手、装填手1~2名)

09式装輪122mm自走榴弾砲(PLL-09)は09式装輪歩兵戦闘車「雪豹」(ZBL-09)のシャーシに122mm榴弾砲を装備した砲塔を搭載した自走榴弾砲。

中国軍は、09式装輪歩兵戦闘車「雪豹」(ZBL-09)を装輪装甲車中心で編成される軽機械化歩兵部隊の中核車輌に位置付ける方針であり、軽機械化歩兵部隊に必要な各種AFVについてもZBL-09の派生型をもってこれに当てる構想。PLL-09もこの構想に基づいて開発、配備が進められているAFVの1つ。

【性能】
PLL-09は圧延鋼板装甲を溶接して製造される。ZBL-09などは主装甲の上にセラミック付加装甲を装着しているが、間接射撃任務が主であるPLL-09は想定される脅威度が低いためか付加装甲は装着されていない。PLL-09の防御力は、車体・砲塔後部が7.62mm通常弾、車体・砲塔側面が7.62mm徹甲弾、砲塔正面が12.7mm重機関銃弾の直撃に抗堪する[1]。間接防御として、NBC防護装置と自動消火装置を標準搭載している[1]。

車体構造は、車体前方左部がパワーパック、前方右部に操縦手席、車体後部に砲塔に搭載。車体後部には横開き式ハッチが設置されており、兵員の乗降や砲弾や装薬の搬入に使用する。乗員は、車長、砲手、操縦手、装填手1~2名の合計4~5名[1]。

エンジンはBF6M1015Cターボチャージド・ディーゼル・エンジンを車体前方右部に搭載[1]。これは独Deuzt社のエンジンを中国でライセンス生産したもの。BF6M10150Cは440馬力の最高出力を発揮し、PLL-09を最高100km/hで走行させる能力を備えている[1]。航続距離は800km[1]。不整地での走行を想定して、路面状態に合わせてタイヤの圧力を調整するタイヤ圧中央制御装置を備えている[1]。PPL-09は、水上浮航性能を有しているが、これはZBL-09ファミリーが共通して保有する能力であり、中国軍がAFVの渡河能力を重視している表れ。水上での推進力は車体後部に装着されたスクリューにより得る。

搭載している96式122mm榴弾砲(PL-96)は旧ソ連の122mm榴弾砲D-30をリバースエンジニアリングで国産化した86式122mm榴弾砲の改良型。口径(121.92cm)や砲身長(32.7口径)には変化は無いが、薬室の容積を拡大しており、初速と命中精度も向上している[5]。96式122mm榴弾砲の最大射程は榴弾で18km、FRFB弾で21km、最も長射程のRAP弾で27km。通常榴弾やFRFB弾以外にも、照明弾、ビラまき用砲弾、対戦車子弾搭載砲弾、誘導砲弾など各種砲弾が用意されている。PLL-09の砲弾搭載数は40発程度と考えられている。

他の中国軍122mm自走榴弾砲と同じくPLL-09も装填補助装置/半自動装填装置が搭載されており、装填手の給弾作業を補助する半自動装填、自動装填装置を使用しない完全手動装填の二つの装填方式が用意されていると思われる。122mm砲弾の発射速度は、装填補助装置を使用することにより、毎分6~8発の発射速度を確保[1]。射撃に当たっては、自走砲大~中隊の指揮車輌からの射撃諸元をデータリンクにより各車輌に転送、各車輌はその諸元を元に射撃統制装置を使用して一斉射撃を行う。必要に応じて各車輌ごとでの照準・射撃も行う。補助武装としては、砲塔上面に12.7mm重機関銃1挺の装備が可能と思われる。砲塔前面には6連装発煙弾発射機が左右に2基搭載されており、必要に応じて煙幕を展開して車輌の姿を隠す。

PLL-09は弾道計算機、コンピュータ制御の火器管制システムを備えており[1]、近年開発された中国軍AFVと同じくネットワーク技術が積極的に取り入れられているものと思われる。僚車や他部隊、偵察機などからデータリンク機能により得られたデータを戦場情報管理システムにより共有化して、即座に部隊行動に反映させる能力を備えていると考えられる。

【運用】
PLL-09は、旅団クラスの支援火力として部隊に追随して前線に近い距離での直接・間接の火力支援を行う事が想定されていると思われる。

PLL-09を装備する軽機械化歩兵部隊は、多くの車輌を路上走行性能が装軌車輌よりも格段に高い装輪車輌でそろえているため、近年整備が進んでいる道路網を利用して迅速な前線への展開が可能[2]。装輪車両のメリットとして、装軌車両よりも信頼性が高くメンテナンスの手間も少なくて済む点があり、ZBL-09を母体とする同系列の車輌で部隊を編制する事により整備・維持の利便性はさらに高められている[2]。

▼PLL-09の後部、側面からの写真

▼PLL-09とセットで運用される装甲弾薬補給車。こちらもZBL-09の派生型の1つ。車体後部ハッチは観音開き式に変更され、車体後部には搬出作業用にクレーンが装備。車内に複数の122mm砲弾収納ラックを搭載している。


【参考資料】
[1]Military-Today「PLL-09 122-mm self-propelled howitzer」
[2]竹田純一『人民解放軍 党と国家戦略を支える230万人の実力』(ビジネス社/2008年)273~277ページ

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