▼59D式。94式58口径105mm砲を採用したため、それまでの59式シリーズに比べて砲身がかなり延伸されているのが特徴。
▼59D式の砲塔部に装着された反応2(FY-2)型爆発反応装甲。1列目と2列目のプレートは、操縦手が頭を出して操縦する際に邪魔にならないように上に跳ね上げて折りたたむことが出来る。
▼車体前面に装着された反応1(FY-1)型爆発反応装甲
▼外部視認用装備として車長用キューポラに民生用CCDカメラを搭載した59D式
▼CCDカメラの映像を視認するパネル。
▼59D式の車内の様子。上から装填手用Mk-4ペリスコープ、105mm砲の砲尾と砲手用直接照準器、自動消火装置(左)と砲塔内側の砲弾ラック(右)。
■"59D式中戦車性能緒元"
開発経緯
中国軍は1980年代、59式中戦車の量産と改良(59-I式戦車(59A式/WZ-120A))、西側との関係改善によって得られた技術を取り入れた 59-II/59-IIA式戦車(59B式/WZ-120B)、79式戦車(69-III式戦車/WZ-121D)、88式戦車(80-I式戦車/WZ-122A/ZTZ-88)等の開発と生産を行うことで立ち遅れていた装甲部隊の戦力近代化を図っていた。しかし、最新の88式戦車にしても、西側では1960~70年代の第二世代戦車の水準に留まっていた。既に西側諸国では、より強力な第3世代戦車が次々に登場しており、中国の最大の仮想敵国であったソ連でも125mm滑腔砲を搭載したT-64、T-72、T-80といった新世代の戦車が多数生産されていた。中国でも、これらの戦車に対向するための次世代戦車の研究開発は行われていたが、その実用化にはまだ長い時間を要することが明白であった。中国軍は次世代戦車の開発を急ぐとともに、既存の戦車に対する一層のアップグレードを施すことで、各国との戦車の性能ギャップを補い装甲部隊の戦力陳腐化を防ぐ対策を推進していくことになった。近代化改修の対象となったのは、中国軍向けに6,000両が生産され装甲部隊の中核を占めていた59式中戦車であった。59式の改良型としては、既に59-I式戦車(59A式/WZ-120A)や59-II/59-IIA式戦車(59B式/WZ-120B)が開発されていたが、最も有力な59-IIA式戦車にしても、中国軍の評価としては西側第二世代戦車の初期程度の性能と見なされていたため、より一層の戦力向上が求められることとなった。
1990年7月、中国軍は、軍の装備近代化の需要に適合し得るように、59-IIA式戦車をベースに現代的なハイテク技術を盛り込んだ本格的改良を実施することを決定した。開発を担当したのは59式を開発した第617廠。関係機関での実現可能性分析を経て、1991年6月には、軍と地方工業部による改造案検討が開始され、翌7月には改造案を本格的に推進させることが確定されるに至った。1991年8月、総参謀部では59式改造案を批准し、同時に戦術・技術面での達成目標を提示した。この要求では、59式の改造においては「通用(汎用・多用途)化、系列(システム)化、組合(ユニット)化」の3つの原則を貫くことが求められた。
開発陣は、総参謀部の要求に従って改造を施した2両の試作車を製作。この車両にはWZ-120Cの生産番号が付与された。1993年の7月から8月にかけてさらに2両の試作車が完成、戦術・技術面での試験を経てこれらの試作車が要求性能を達成していることが証明された。1993年10月から1994年6月にかけて、2両の試作車が射撃統制システムに関する評価試験を実施。試験中に発射された砲弾は367発。様々な状態での射撃試験を行い、いずれも満足の行く試験結果が得られた。1994年8月から1995年1月にかけて、開発陣は3両の試作車による射撃試験、走行試験、火器管制装置と消火装置試験、煙幕発煙弾試験、寒地運用試験等の総合評価試験を行い、特に火器管制装置について高い評価を得られた。この結果を受けて、1995年4月にはWZ-120Cの制式採用を決定し、「ZTZ-59DI型中型坦克」(通称59DI型)の名称が与えられた。さらに、59DI型をベースにして攻撃力の強化に重点を置いた改良が行われる事が決定された。81A式51口径105mmライフル砲に換えて94式58口径105mmライフル砲を搭載した改良型(生産番号WZ-120D)は、1995年11月に「ZTZ-59D型中型坦克」(通称59D型)として制式採用され、翌1996年から既存の59式中戦車に対して59D式へのアップグレードが開始された。中国軍以外では、ミャンマーでも59D式戦車の運用が行われている。
59D式中戦車の特徴
59D式の改造は主に攻撃力と防御力の改善を中心にして行われたため、車体の基本構造は原型となった59-IIA式と大きな変更は無い。ただし、エンジンについては59式以来の12150L(520hp)、もしくは出力強化型の12150L-7BW(580hp)を搭載しているという2つの説がある。ここでは両論併記の形で記述を行う。
59D式の外見上の最大の特徴は、防御力強化のために砲塔や車体正面に装着された爆発反応装甲である。これは、山西省の中北大学で開発されたFY系列双防反応装甲(FY=反応)であり、砲塔には反応1型(FY-1)28枚、車体前面には反応2型(FY-2)13枚が装着されている。FY-1/2とも車体に直接接触させず、間隔をあけて装着されている。砲塔正面に装着されたFY-1は、斜めに組み合わされてV字型になる様に取り付けられているが、これは爆発反応装甲の効果を挙げやすくするためであると見られる。車体正面に装着されたFY-2の場合、反応装甲の厚みの4倍ほどの距離を置いて設置されており、さらに主装甲には薄い鋼板がボルト止めされている。FY-1型のサイズは375mm×250mm×28mm(6.9kg)と250mm×250mm×28mm(4.8kg)の2種類があり、FY-2のサイズは375mm×250mm×35mm(6.3kg)と250mm×250mm×35mm(9.2kg)の2種類があり、いずれも成型炸薬弾の貫通力を70%低下させ、運動エネルギー弾の貫通力を30%低下させる能力を有している。FY-1/2を装着した場合の対弾性能(主装甲+爆発反応装甲)は均質鋼板(RHA)換算で、砲塔正面が520mm、車体正面が490mmとなり(対APFSDSか対HEATのいずれかは不明)、軍から要求された86式105mmAPFSDS(貫徹力460mm)に対する抗堪性能を得ることに成功したとされる。ほかに、HEAT弾対策として車体側面のサイドスカートや砲塔後部のスラットアーマーの装着が行われている。原型の59-IIA式では砲塔側面前部に4連装発煙弾発射機×2を搭載していたが、59D式ではその箇所に爆発反応装甲を装着したため、反応装甲とスラットアーマーの間に設置箇所を変更している。防御面に関しては、59式シリーズで初めてNBC防護システムが装備されたのも見逃すことの出来ない点である。
既出の通り、59D式は攻撃力強化のために、81A式51口径105mmライフル砲に換えて94式58口径105mmライフル砲を搭載した。94式は、88A式主力戦車や85-II式戦車(風暴II型/WZ-1227F2)で採用されていた83A式58口径105mmライフル砲の改良型である。94式105mmライフル砲は81式105mmライフル砲に比べ砲身が800mm延長されており、それに伴って排煙装置前部のサーマルスリーブが3分割式になっているのが外観上のポイントである。長砲身化によって砲弾の初速が100m/s速くなり、装甲貫通力や最大射程も向上したとされる。
59D式が運用可能な砲弾はAPFSDS-T、APDS、HEAT、HESH等があるが、主な砲弾の性能については以下の通り。
1990年代後半から、装甲貫徹力を強化した93式APFSDS-Tや劣化ウラン弾芯を使用したAPFSDS-T(DU)、GP-2砲発射式対戦車ミサイルもラインナップに加わることになり、59D式の攻撃力強化に貢献する事となった。GP-2砲発射式対戦車ミサイルは、ロシアから導入した9K116「バスチオン」砲発射式対戦車ミサイルを元に開発された対戦車ミサイルで100mm砲と105mm砲用の2種類が存在する。ミサイルの後部に薬莢を到着した状態で装填されており、ミサイル本体の重量は17.8kg、薬莢込みで19.8kg。約600mmの装甲貫通力を有しており、最大射程は5,000m。装甲車両だけでなく、トーチカなどの防御拠点や低空飛行を行うヘリコプターへの攻撃も可能。誘導方式はレーザー・セミアクティブ誘導で、運用する戦車は目標照射用のレーザー・デグジネーターを装備する必要がある。59D式の場合は、砲手用サイトにレーザー・デグジネーターを組み込む改装を受ける事になる。59D式の105mm砲弾搭載数については38発説と40発説が有る。副武装としては、対空・対地兼用の54式12.7mm重機関銃×1(弾薬500発)、主砲同軸機銃の59式7.62mm機関銃×1(弾薬3,000発)が搭載されている。
59D式の射撃統制システムは、88式戦車(80-I式戦車/WZ-122A/ZTZ-88)と同じイスラエル製の37A型簡易射撃統制システムを採用している。同システムは、車長・砲手サイトの中国第二世代の微光増幅式夜間暗視装置(最大視認距離1,400m)、弾道コンピューター、レーザーレンジファインダーを内蔵した2軸安定式光学照準機、2軸砲安定装置、目標位置の仰角・方位角・横風などを計測する環境センサー、射撃諸元の入力などの操作を行う液晶入力パネル等で構成される。射撃の手順は、砲手がレーザーレンジファインダーで目標までの距離を測定すると、同時に弾道計算機が目標までの距離、気温、横風、車体の傾き、砲の状態、弾薬の種類などの各種諸元を計算して、射撃角度/方位を算出し、砲手用パネルに諸元を表示させる。同時に砲安定装置を自動操作して算出した諸元に基づく角度にする。これを受けて砲手は目標への射撃を実行する。射撃統制システムの性能は向上し操作も以前に比べて省力化されたが、行進間射撃は困難で、停車-射撃-機動のパターンを取るのは59-IIA式と同様。停止目標に対する照準-射撃までの時間は6秒、移動目標に対しては9秒となっている。後に砲手用サイトの暗視装置は、より能力の高い赤外線暗視装置(最大視認距離2,100m)に変更された。暗視装置としてはこのほかに、操縦手用の微光増幅式暗視装置(最大視認距離400m)が装備されている。夜間射撃における停車状態での命中精度は、距離1,000mにおいて停止目標に対して90%、移動目標に対して85%。
▼59D式の砲塔部に装着された反応2(FY-2)型爆発反応装甲。1列目と2列目のプレートは、操縦手が頭を出して操縦する際に邪魔にならないように上に跳ね上げて折りたたむことが出来る。
▼車体前面に装着された反応1(FY-1)型爆発反応装甲
▼外部視認用装備として車長用キューポラに民生用CCDカメラを搭載した59D式
▼CCDカメラの映像を視認するパネル。
▼59D式の車内の様子。上から装填手用Mk-4ペリスコープ、105mm砲の砲尾と砲手用直接照準器、自動消火装置(左)と砲塔内側の砲弾ラック(右)。
■"59D式中戦車性能緒元"
全備重量 | 37トン以上 |
全長 | 9.5m |
車体長 | 6.04m |
全幅 | 3.320m |
全高 | 2.218m(砲塔頂部)、2.59m(機銃含む) |
エンジン | 12150L水冷ディーゼル 520hp、もしくは12150L-7BW(580hp) |
最高速度 | 50km/h |
燃料搭載量 | 812L |
航続距離 | 420~440km(車内燃料のみ)600km(増加タンク付き) |
渡渉深度 | 1.4m |
武装 | 94式58口径105mmライフル砲×1(38発説と40発説が有る) |
54式12.7mm重機関銃×1(500発) | |
59式7.62mm機関銃×1(3,000発) | |
戦車砲俯仰角 | -4~+17度 |
装甲 | 砲塔:鋳造装甲150~203mm/車体前面:溶接鋼板79~97mm |
装甲(爆発反応装甲込み) | 520mm(砲塔)/490mm(車体前面) |
乗員 | 4名 |
無線機 | CWT-167/CYY-168 |
開発経緯
中国軍は1980年代、59式中戦車の量産と改良(59-I式戦車(59A式/WZ-120A))、西側との関係改善によって得られた技術を取り入れた 59-II/59-IIA式戦車(59B式/WZ-120B)、79式戦車(69-III式戦車/WZ-121D)、88式戦車(80-I式戦車/WZ-122A/ZTZ-88)等の開発と生産を行うことで立ち遅れていた装甲部隊の戦力近代化を図っていた。しかし、最新の88式戦車にしても、西側では1960~70年代の第二世代戦車の水準に留まっていた。既に西側諸国では、より強力な第3世代戦車が次々に登場しており、中国の最大の仮想敵国であったソ連でも125mm滑腔砲を搭載したT-64、T-72、T-80といった新世代の戦車が多数生産されていた。中国でも、これらの戦車に対向するための次世代戦車の研究開発は行われていたが、その実用化にはまだ長い時間を要することが明白であった。中国軍は次世代戦車の開発を急ぐとともに、既存の戦車に対する一層のアップグレードを施すことで、各国との戦車の性能ギャップを補い装甲部隊の戦力陳腐化を防ぐ対策を推進していくことになった。近代化改修の対象となったのは、中国軍向けに6,000両が生産され装甲部隊の中核を占めていた59式中戦車であった。59式の改良型としては、既に59-I式戦車(59A式/WZ-120A)や59-II/59-IIA式戦車(59B式/WZ-120B)が開発されていたが、最も有力な59-IIA式戦車にしても、中国軍の評価としては西側第二世代戦車の初期程度の性能と見なされていたため、より一層の戦力向上が求められることとなった。
1990年7月、中国軍は、軍の装備近代化の需要に適合し得るように、59-IIA式戦車をベースに現代的なハイテク技術を盛り込んだ本格的改良を実施することを決定した。開発を担当したのは59式を開発した第617廠。関係機関での実現可能性分析を経て、1991年6月には、軍と地方工業部による改造案検討が開始され、翌7月には改造案を本格的に推進させることが確定されるに至った。1991年8月、総参謀部では59式改造案を批准し、同時に戦術・技術面での達成目標を提示した。この要求では、59式の改造においては「通用(汎用・多用途)化、系列(システム)化、組合(ユニット)化」の3つの原則を貫くことが求められた。
開発陣は、総参謀部の要求に従って改造を施した2両の試作車を製作。この車両にはWZ-120Cの生産番号が付与された。1993年の7月から8月にかけてさらに2両の試作車が完成、戦術・技術面での試験を経てこれらの試作車が要求性能を達成していることが証明された。1993年10月から1994年6月にかけて、2両の試作車が射撃統制システムに関する評価試験を実施。試験中に発射された砲弾は367発。様々な状態での射撃試験を行い、いずれも満足の行く試験結果が得られた。1994年8月から1995年1月にかけて、開発陣は3両の試作車による射撃試験、走行試験、火器管制装置と消火装置試験、煙幕発煙弾試験、寒地運用試験等の総合評価試験を行い、特に火器管制装置について高い評価を得られた。この結果を受けて、1995年4月にはWZ-120Cの制式採用を決定し、「ZTZ-59DI型中型坦克」(通称59DI型)の名称が与えられた。さらに、59DI型をベースにして攻撃力の強化に重点を置いた改良が行われる事が決定された。81A式51口径105mmライフル砲に換えて94式58口径105mmライフル砲を搭載した改良型(生産番号WZ-120D)は、1995年11月に「ZTZ-59D型中型坦克」(通称59D型)として制式採用され、翌1996年から既存の59式中戦車に対して59D式へのアップグレードが開始された。中国軍以外では、ミャンマーでも59D式戦車の運用が行われている。
59D式中戦車の特徴
59D式の改造は主に攻撃力と防御力の改善を中心にして行われたため、車体の基本構造は原型となった59-IIA式と大きな変更は無い。ただし、エンジンについては59式以来の12150L(520hp)、もしくは出力強化型の12150L-7BW(580hp)を搭載しているという2つの説がある。ここでは両論併記の形で記述を行う。
59D式の外見上の最大の特徴は、防御力強化のために砲塔や車体正面に装着された爆発反応装甲である。これは、山西省の中北大学で開発されたFY系列双防反応装甲(FY=反応)であり、砲塔には反応1型(FY-1)28枚、車体前面には反応2型(FY-2)13枚が装着されている。FY-1/2とも車体に直接接触させず、間隔をあけて装着されている。砲塔正面に装着されたFY-1は、斜めに組み合わされてV字型になる様に取り付けられているが、これは爆発反応装甲の効果を挙げやすくするためであると見られる。車体正面に装着されたFY-2の場合、反応装甲の厚みの4倍ほどの距離を置いて設置されており、さらに主装甲には薄い鋼板がボルト止めされている。FY-1型のサイズは375mm×250mm×28mm(6.9kg)と250mm×250mm×28mm(4.8kg)の2種類があり、FY-2のサイズは375mm×250mm×35mm(6.3kg)と250mm×250mm×35mm(9.2kg)の2種類があり、いずれも成型炸薬弾の貫通力を70%低下させ、運動エネルギー弾の貫通力を30%低下させる能力を有している。FY-1/2を装着した場合の対弾性能(主装甲+爆発反応装甲)は均質鋼板(RHA)換算で、砲塔正面が520mm、車体正面が490mmとなり(対APFSDSか対HEATのいずれかは不明)、軍から要求された86式105mmAPFSDS(貫徹力460mm)に対する抗堪性能を得ることに成功したとされる。ほかに、HEAT弾対策として車体側面のサイドスカートや砲塔後部のスラットアーマーの装着が行われている。原型の59-IIA式では砲塔側面前部に4連装発煙弾発射機×2を搭載していたが、59D式ではその箇所に爆発反応装甲を装着したため、反応装甲とスラットアーマーの間に設置箇所を変更している。防御面に関しては、59式シリーズで初めてNBC防護システムが装備されたのも見逃すことの出来ない点である。
既出の通り、59D式は攻撃力強化のために、81A式51口径105mmライフル砲に換えて94式58口径105mmライフル砲を搭載した。94式は、88A式主力戦車や85-II式戦車(風暴II型/WZ-1227F2)で採用されていた83A式58口径105mmライフル砲の改良型である。94式105mmライフル砲は81式105mmライフル砲に比べ砲身が800mm延長されており、それに伴って排煙装置前部のサーマルスリーブが3分割式になっているのが外観上のポイントである。長砲身化によって砲弾の初速が100m/s速くなり、装甲貫通力や最大射程も向上したとされる。
59D式が運用可能な砲弾はAPFSDS-T、APDS、HEAT、HESH等があるが、主な砲弾の性能については以下の通り。
弾種 | 弾頭重量 | 総重量 | 砲口初速 | 装甲貫徹力 |
HE-T | 13kg | 24kg | 900m/s | |
86式APFSDS-T | 5.8kg | 23.51kg | 1,500m/s | 射程2,000mで460mm |
93式APFSDS-T | 5.8kg | 23.51kg | 1,500m/s | 射程2,000mで540mm |
APFSDS-T(DU) | 5.8kg | 17.5kg | 1,500m/s | 射程2,000mで600mm |
HEAT-T | 10.5kg | 22kg | 1,100m/s | 距離に関わりなく460mm |
GP-2砲発射式対戦車ミサイル | 不明 | 17.8kg | 不明 | 500~600mm |
59D式の射撃統制システムは、88式戦車(80-I式戦車/WZ-122A/ZTZ-88)と同じイスラエル製の37A型簡易射撃統制システムを採用している。同システムは、車長・砲手サイトの中国第二世代の微光増幅式夜間暗視装置(最大視認距離1,400m)、弾道コンピューター、レーザーレンジファインダーを内蔵した2軸安定式光学照準機、2軸砲安定装置、目標位置の仰角・方位角・横風などを計測する環境センサー、射撃諸元の入力などの操作を行う液晶入力パネル等で構成される。射撃の手順は、砲手がレーザーレンジファインダーで目標までの距離を測定すると、同時に弾道計算機が目標までの距離、気温、横風、車体の傾き、砲の状態、弾薬の種類などの各種諸元を計算して、射撃角度/方位を算出し、砲手用パネルに諸元を表示させる。同時に砲安定装置を自動操作して算出した諸元に基づく角度にする。これを受けて砲手は目標への射撃を実行する。射撃統制システムの性能は向上し操作も以前に比べて省力化されたが、行進間射撃は困難で、停車-射撃-機動のパターンを取るのは59-IIA式と同様。停止目標に対する照準-射撃までの時間は6秒、移動目標に対しては9秒となっている。後に砲手用サイトの暗視装置は、より能力の高い赤外線暗視装置(最大視認距離2,100m)に変更された。暗視装置としてはこのほかに、操縦手用の微光増幅式暗視装置(最大視認距離400m)が装備されている。夜間射撃における停車状態での命中精度は、距離1,000mにおいて停止目標に対して90%、移動目標に対して85%。
59P式中戦車/アル・ズバイル2戦車
▼59P式中戦車
▼スーダン軍で採用された59P式(同国ではAl Zubair2の名称が与えられている。)(C)Military Industry Corporation (MIC) 公式サイト
▼2007年12月31日に挙行されたスーダンの軍事パレードに参加したAl Zubair2。
59P式は、2007年にアラブ首長国連邦のドバイで開催されたIDEX2007兵器ショーで公開された59式の輸出向けアップグレード型。Pは59P式の販売を担当する解放軍系の輸出企業である中国保利(Poli)集団公司の頭文字に由来する。59P式の基本的な改造内容は59D式に準じている。ただし、59D式よりも爆発反応装甲の装着数が増加しており、砲塔には34枚のFY-1(59D式は28枚)、車体前面は18枚のFY-2(59D式は13枚)が装着されている。また、車体側面のサイドスカートの上にも爆発反応装甲が装備されている。ほかには、車体側面のフェンダー部の装具入れも一体型のものに変更されている。戦車砲は59D式と同じ94式105mmライフル砲か、もしくは新規開発の105mm滑腔砲を搭載しているとのこと。59D式と同じくGP-2砲発射式対戦車ミサイルの運用が可能。砲手用サイトの形状は59D式とは異なり、射撃統制システム自体が変更されている可能性がある。エンジンは、580hp、730hp、800hpの3種類が用意されている。エンジン換装に伴って排気口は原型の車体左側から車体右側に移設されている。最高速度は55km/h。
59P式は、現在スーダンとバングラデシュで運用されていることが確認されている。スーダンでは59P式に「Al Zubair2」の名称を与えていることが判明しているが、就役数など詳細なデータについては不明な点が多い。
59D式の評価について
1990年代後半から、96式主力戦車や98/99式主力戦車といった中国第3世代戦車の就役が開始された。しかし、生産コストの高いこれらの戦車の配備は緩やかなものに為らざるを得ず、現時点でも中国軍の戦車の約7割(約5,000両以上)は59式シリーズが占める状況が続いている。中国軍は装甲部隊の戦力の陳腐化を防ぐため、59式のアップグレードを行って少しでも戦力向上を行う必要に迫られている。ライフサイクルコストの面から、旧式戦車のアップグレードという選択が総合的に低コストで済むのかという点では論議のある所であるが、中国軍にとっては他に選択肢が無いのが正直な所であろう。
59D式へのアップグレードは1996年から開始されているが、まだ多くの59式が未改修のまま就役している。また、59D式とは異なる改修が施された車両も何種類か見うけられる。59D式以外の近代化改装型については以後の項で取り上げることにする。
【59D式派生型一覧】
【参考資料】
「中国戦車開発史[1]」『月刊グランドパワー2004年6月号』(古是三春/ガリレオ出版/2004年5月25日)
「中国59式改進型中型坦克」『火力戦神-THERMODYNAMIC POWER 陸戦編【2】』(彭援朝編集/中国文聨出版社/2004年7月)
Jane's Armour and Artillery 2006-2007 (Jane's Information Group)
「宝利公司推出新型坦克改良計画」『漢和防務評論』2007年6月号
「IDEX2007レポート(2)中国とパキスタンのAFV」『軍事研究』2007年6月(宇垣大成/㈱ジャパン・ミリタリー・レビュー)
亜東軍事網「ZTZ-59DI主戦坦克」
全国文化信息資源共享工程-「中国坦克発展之程」
坦克與装甲車両「中国59式中型坦克」
中国武器大全 「中国59式到88式主戦坦克的技術発展」
中国武器大全「中国坦克族譜」
中国武器大全「中国59式到88式主戦坦克的技術発展(上)(下)」
環球展望「中国坦克専家談”外貿”坦克発展」
星島環球報「孟加拉国慶閲式」2008年3月27日
新政期課程網「中国主力戦車」
紅狐狸軍事天地「関于中国坦克発展的蛛絲馬述」
中華網「中国坦克之痛-59式主戦坦克編-」
中華網「可怕:中国59D式坦克装加長身管94式坦克炮」
「中日坦克工業50年発展対比與反思」
人民網「俄羅斯媒体評中国坦克業:仍受俄式坦克影響」
Chinese Defence Today
Global Security
Military Industry Corporation公式サイト
Sudaninside「Military Industry Corporation」
Myanmar Defence Weapons「Myanmar armed forces 」(2009年12月23日)
▼スーダン軍で採用された59P式(同国ではAl Zubair2の名称が与えられている。)(C)Military Industry Corporation (MIC) 公式サイト
▼2007年12月31日に挙行されたスーダンの軍事パレードに参加したAl Zubair2。
59P式は、2007年にアラブ首長国連邦のドバイで開催されたIDEX2007兵器ショーで公開された59式の輸出向けアップグレード型。Pは59P式の販売を担当する解放軍系の輸出企業である中国保利(Poli)集団公司の頭文字に由来する。59P式の基本的な改造内容は59D式に準じている。ただし、59D式よりも爆発反応装甲の装着数が増加しており、砲塔には34枚のFY-1(59D式は28枚)、車体前面は18枚のFY-2(59D式は13枚)が装着されている。また、車体側面のサイドスカートの上にも爆発反応装甲が装備されている。ほかには、車体側面のフェンダー部の装具入れも一体型のものに変更されている。戦車砲は59D式と同じ94式105mmライフル砲か、もしくは新規開発の105mm滑腔砲を搭載しているとのこと。59D式と同じくGP-2砲発射式対戦車ミサイルの運用が可能。砲手用サイトの形状は59D式とは異なり、射撃統制システム自体が変更されている可能性がある。エンジンは、580hp、730hp、800hpの3種類が用意されている。エンジン換装に伴って排気口は原型の車体左側から車体右側に移設されている。最高速度は55km/h。
59P式は、現在スーダンとバングラデシュで運用されていることが確認されている。スーダンでは59P式に「Al Zubair2」の名称を与えていることが判明しているが、就役数など詳細なデータについては不明な点が多い。
59D式の評価について
1990年代後半から、96式主力戦車や98/99式主力戦車といった中国第3世代戦車の就役が開始された。しかし、生産コストの高いこれらの戦車の配備は緩やかなものに為らざるを得ず、現時点でも中国軍の戦車の約7割(約5,000両以上)は59式シリーズが占める状況が続いている。中国軍は装甲部隊の戦力の陳腐化を防ぐため、59式のアップグレードを行って少しでも戦力向上を行う必要に迫られている。ライフサイクルコストの面から、旧式戦車のアップグレードという選択が総合的に低コストで済むのかという点では論議のある所であるが、中国軍にとっては他に選択肢が無いのが正直な所であろう。
59D式へのアップグレードは1996年から開始されているが、まだ多くの59式が未改修のまま就役している。また、59D式とは異なる改修が施された車両も何種類か見うけられる。59D式以外の近代化改装型については以後の項で取り上げることにする。
【59D式派生型一覧】
59DI式 | WZ120C | 59-II式の改良型。軍制式名はZTZ-59DI型。中国第二世代の射撃統制システムと微光増幅式暗視装置を搭載、防御力強化のためFY-1/2爆発反応装甲を装着。 |
59D式 | WZ120D | ZTZ-59DI型の改良型。軍制式名はZTZ-59D型。主砲を長砲身の83A式105mmライフル砲に換装。 |
59P式 | - | IDEX2007兵器ショーで公開。改装内容は59D式に相当する。戦車砲は83A式もしくは新開発の長砲身105mm滑腔砲。 |
Al-Zubair 2 | - | スーダン軍で採用された59P式。 |
【参考資料】
「中国戦車開発史[1]」『月刊グランドパワー2004年6月号』(古是三春/ガリレオ出版/2004年5月25日)
「中国59式改進型中型坦克」『火力戦神-THERMODYNAMIC POWER 陸戦編【2】』(彭援朝編集/中国文聨出版社/2004年7月)
Jane's Armour and Artillery 2006-2007 (Jane's Information Group)
「宝利公司推出新型坦克改良計画」『漢和防務評論』2007年6月号
「IDEX2007レポート(2)中国とパキスタンのAFV」『軍事研究』2007年6月(宇垣大成/㈱ジャパン・ミリタリー・レビュー)
亜東軍事網「ZTZ-59DI主戦坦克」
全国文化信息資源共享工程-「中国坦克発展之程」
坦克與装甲車両「中国59式中型坦克」
中国武器大全 「中国59式到88式主戦坦克的技術発展」
中国武器大全「中国坦克族譜」
中国武器大全「中国59式到88式主戦坦克的技術発展(上)(下)」
環球展望「中国坦克専家談”外貿”坦克発展」
星島環球報「孟加拉国慶閲式」2008年3月27日
新政期課程網「中国主力戦車」
紅狐狸軍事天地「関于中国坦克発展的蛛絲馬述」
中華網「中国坦克之痛-59式主戦坦克編-」
中華網「可怕:中国59D式坦克装加長身管94式坦克炮」
「中日坦克工業50年発展対比與反思」
人民網「俄羅斯媒体評中国坦克業:仍受俄式坦克影響」
Chinese Defence Today
Global Security
Military Industry Corporation公式サイト
Sudaninside「Military Industry Corporation」
Myanmar Defence Weapons「Myanmar armed forces 」(2009年12月23日)
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